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Thursday, May 6, 2021

iPhoneでテレビがプロ画質に!? Apple TVのカラーバランスを試す - AV Watch

セットトップボックス「Apple TV」向けに、アップルが先月提供開始した最新OS「tvOS 14.5」。最新OSでは、テレビの画質を最適化する“カラーバランス”機能が新搭載され、テレビの表示に最適な映像をApple TVから出力できるようになった。

アップルは同機能を「iPhoneの光センサーを利用し、カラーバランスを世界中の撮影監督が採用している業界標準の仕様と比較します。このデータを利用して、Apple TVはそのビデオ出力を自動的に調整して、より正確な色調と改善されたコントラストを実現します」と説明しているが、具体的にはどのような効果が得られるのか。実際に試してみた。

詳細は後述するが、このカラーバランスを利用することで、高性能な映像エンジンを持たない安価なディスプレイでも、“制作者らが意図したであろうプロ画質”に近付けることができた。

Apple TVとiPhoneを持つAVユーザーは、自身の持つテレビやディスプレイで試してみることをお勧めする。

プロ用モニタ(写真左)と、カラーバランス調整済みディスプレイ(右)の表示比較。色調をかなり近付けることができている。詳細は後述

カラーバランスで映像がプロ用モニタライクに!?

では、オリジナルと調整済みの映像とでは、どのような違いが出るのか。Apple TVから出力された信号と、ディスプレイに表示された映像を撮影したのが、下記の画像だ。

Apple TVから出力された信号

オリジナル信号
調整済み信号(「スタンダード」でカラーバランス調整)

ディスプレイに表示された映像

オリジナル信号を、映像モード「スタンダード」で表示
調整済み信号を、映像モード「スタンダード」で表示

上段の“調整済み信号”だけを見ると、暖色の色味と強いコントラストに違和感が持つが、実際にディスプレイに表示された映像を見ると、全体の色調は、スタンダード+調整済み信号の方が業界スタンダードの色温度(D65)に近くなっているように感じる。コントラストの調整は多少やり過ぎな感じもするが、見栄えはよく、スタンダードモードの赤被りは上手く取れている。

では、Apple TVによるカラーバランス調整後の表示映像は、どこまで“業界標準の仕様”に近付くことができているのだろう。すこし意地悪だが、ゲーミングモニタの横に映像制作者向けのプロ用モニタを設置して、両者を見比べることにした。

比較に用意したのは、キヤノンの17型モニタ「DP-V1710」。同モニタは購入後、校正のキャリブレーションが出来ていないのだが使用300時間未満と比較的新しい状態であること、またApple TVのカラーバランスで「このテレビのカラーバランスは正確です」とのお墨付きをもらったことも踏まえ、問題ないと判断。比較参考に使用した。

キヤノンの映像制作用モニタ「DP-V1710」
Apple TVでカラーバランスを実行しようとしたら「このテレビのカラーバランスは正確です」の表示

2台の比較には、Apple TV 4Kをそれぞれ接続。ZED1Jにはカラーバランス調整した信号を入力し、V1710にはカラーバランス調整していないオリジナル信号を入力した。

ZED1Jは、スタンダード、シネマモードで表示。V1710はデフォルトのITU-R BT.709モード(色温度:D65/ガンマ:2.2/色域:BT.709)で表示した。

V1710はIPSの4Kパネルで直下型LED、ZED1JはVAの2Kパネルでエッジ型LEDと、仕様そのものが異なるため、厳密な比較とは言えないが、色調だけを見れば、“調整済み”の方がプロ用モニタにかなり近づくことができているのが分かる。しかも、ZED1Jのシネマモード(デフォルト)よりも、カラーバランスで調整を加えた方がプロ用モニタに近い色調にできた。

モデルの状態や表示デバイスによってバラツキはあるだろうが、今回テストに使用したZED1Jの調整に関しては、カラーバランスはすこぶる良好な結果が得られた。

業務用モニタとの比較(「スタンダード」の場合)

V1710:モード「ITU-R BT.709」。ZED1J:モード「スタンダード」
V1710:モード「ITU-R BT.709」。ZED1J:モード「スタンダード」+カラーバランス調整済み

業務用モニタとの比較(「シネマ」の場合)

V1710:モード「ITU-R BT.709」。ZED1J:モード「シネマ」
V1710:モード「ITU-R BT.709」。ZED1J:モード「シネマ」+カラーバランス調整済み

手軽かつ正統な画調でコンテンツを楽しめる有益な機能

仮に「自宅テレビを映像制作の画調に“目視”で合わせよ」と言われても、一般ユーザはもちろん、知識のあるAVユーザでさえすんなり出来るものないだろう。映像調整メニューを開いても、調整幅が大きすぎて目的の画調に出来ない場合もあるし、そもそも設定メニューが用意されておらず調整不可能な場合もある。個体に強いクセがある場合は、調整では取れない。

しかし今回行なったApple TVのカラーバランス機能では、テレビ側の映像設定を調整することなく、iPhoneを使ったわずか数十秒程度の測定だけで、プロ用モニタライクな画調にできてしまい、正直ちょっと驚いた。

従来オーディオ・ビジュアル機器は、“プレーヤーは原画忠実で出力。あくまで調整はディスプレイで”というのが暗黙のルールだったように思う。“自社のスマホを使ってディスプレイの画調を把握、業界標準の画になるよう信号そのものを(良い意味で)改変する”という取り組みは、従来のAVメーカでは踏み込み難かった、アップルならではの大胆なアプローチと思う。

もちろん、ハイエンドのテレビには、製造工程の段階から厳密なパネル調整を行なった上で出荷されているモデルや、リモコンボタン一つで映像制作者のモードに遷移できるモデルもあるため、カラーバランス調整を必要としない場合もある。それとは別に、照度や色温度を検知し視聴環境に応じて映像を自動調整するモデル、機械学習を駆使してコンテンツや入力信号に応じて最適な映像パラメータに自動調整するモデルなど、テレビならではの映像最適化機能も進化しており、プロ用モニタライクな画調が全てというわけでもない。

とはいえ、調整項目の限られた安価なディスプレイだったり、店頭モードといったあべこべな画で観てしまっているユーザなどには、Apple TVのカラーバランスは、手軽かつ正統な画調でコンテンツを楽しめる非常に有益な機能と言えるだろう。

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