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Friday, February 21, 2020

日本の「国民食」誕生を支えた気配りのレシピ(JBpress) - Yahoo!ニュース

 「国民食」というものに大衆文化の匂いを感じる。万人に親しまれる食になるまでに、無数の名もなき生活者がそれを作り、食べ、親しんでいく過程を経るからだ。

日本の国民食のひとつ、焼き餃子

 いつかどこかで誕生した食が国民食になっていく。その過程では、「レシピ」が大きな役割を果たす。多くの人がその料理を再現できれば、普及が早まるからだ。

 そんな数々の日本の国民食が成立した経緯を、数々のレシピを読み解くことで考察する本が出た。「気配りのあるレシピ」が国民食の成立に寄与していることを感じさせる。

■ 昔のレシピどおりに料理して実食

 魚柄仁之助(うおつか・じんのすけ)著『国民食の履歴書』(青弓社刊)は、国民食とよばれるほど浸透している料理や調味料が、いつごろから食べられるようになり、どう変遷してきたかをたどる1冊。カレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃがという、現在では定番中の定番の料理や調味料が、食文化研究家の著者に捌かれていく。

 明治から昭和にかけての出版物の表紙とレシピがふんだんに載っており、それらの記述を考察の根拠としている。たとえば、日本の焼き餃子の歴史は、戦後、復員兵による露店売りで始まったとする説があるが、著者は1940(昭和15)年発行の『主婦之友』付録に「焼餃子の作り方」がすでに載っていることを明示し、「焼き餃子は戦前の日本の家庭料理に登場していた」と正す。定説と化している国民食の歴史が次々と覆されていく。

 レシピに沿って、著者自身がその料理を作って食べ、感想を読者に伝える。これも本書の特徴だ。たとえば、1915(大正4)年発行の『家庭雑誌』に紹介された「カレー煮」をレシピ通りに再現し、「下ごしらえがいかにも昔の和食という感じ」「これが『うまい!』のでした」と述べ、当時の日本人がお吸い物とカレーを結びつけていたことを見出す。

■ 伝え手の「気配り」で料理の結果は変わる

 興味深かったのは、料理法の伝え手の「気配り」を感じさせるレシピが散見されたことだ。

 たとえば、マヨネーズが「マイナイソース」とよばれていた1920(大正9)年に発行された『家庭料理講義録』には、そのマイナイソースのレシピがある。下記は著者によるレシピの要約である。

・酢、卵黄、砂糖、塩、胡椒を大皿に入れ、フォークかスプーンですり混ぜる。
・サラダ油二滴落として二分間混ぜる。
・サラダ油三滴落として二分間混ぜることを四回繰り返す。
・サラダ油大さじ二分の一杯を入れて二分間混ぜることを八、九回繰り返す。
(以下略)

 ほかのレシピでは「油を一滴ずつ落としながら、ずっと攪拌し続ける」などと記されるが、それだと一人で調理する場合、両手が塞がってボウルを抑えることができず、難しい。その点、著者は『家庭料理講義録』の伝え手を「非常に気配りが行き届いた方でしょう」「このレシピだと『サラダ油二滴落として、二分間混ぜる』を繰り返すのですから、一人でもできます」と賞賛する。

 他方、同じマヨネーズでも1939(昭和14)年発行『糧友』での満蒙移住予定者向けレシピには、この作業について「食油を少しづゝ流し入れ」としか書かれていない。著者は「初心者にはこの『少しづゝ』がまさか『一滴、一滴落として』とは思わないでしょう」「多くの失敗分離マヨネーズを生み出したと思われます」と酷評する。

 料理する人の姿を想像しての「思いやり」が、レシピの記述ではいかに大切なことか。

■ 「犠牲を払ふつもりで」との注意書きも

 究極の優しさあふれるレシピが餃子の章に見られる。1926(大正15)年に山田政平という料理講師が著した『素人に出来る支那料理』では、鍋に油を引いて餃子を焼く方法が一通り示されたあと、こんな注意書きに出くわす。

 注意 この方法でしたものは一番美味しいのですが、加減を筆で伝へることは到底不可能ですから、小さなフライ鍋か何かで、少し犠牲を払ふつもりで習得していたゞく外はありません。

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