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Monday, January 17, 2022

Google Playが使える13.3型のE Inkタブレット「BOOX Max Lumi2」。実質A4サイズの大画面、スペック強化で動作サクサク - PC Watch

「BOOX Max Lumi2」。実売価格は109,800円

 ONYX Internationalの「BOOX Max Lumi2」は、E Ink電子ペーパーを採用した13.3型タブレットだ。Android 11を搭載し、Google Playストアからさまざまなアプリをインストールして利用できる。

 E Ink電子ペーパーを採用したAndroidタブレット「BOOX」シリーズの中で「Max」と名前がつくモデルは、シリーズ中最大の、13.3型という画面サイズを備えている。実質A4サイズのこの製品は、雑誌のページをほぼ等倍で表示できるほか、コミックを見開きで原寸以上の大きさで表示できるなど、大画面を求めるユーザーには最適な製品だ。

 今回の「BOOX Max Lumi2」はその名前が示すように、従来の「BOOX Max Lumi」の後継にあたり、Snapdragon 662を採用するなどパフォーマンスの強化が図られているほか、ソフトウェアの刷新によって操作性にも変更が見られる。国内代理店であるSKTから借用した機材を用い、電子書籍ユースにおける使い勝手を中心にチェックする。

順当なスペックアップ。外部ディスプレイ機能は廃止

まずは従来モデルとの比較から。一部不揃いな項目もあるが、明らかな誤字や全角半角の表記ルールを修正した以外は、原則として公式の表記に準じている。

BOOX Max Lumi2 BOOX MAX Lumi
パネル 13.3インチMobius Einkスクリーン フラット13.3インチEinkフレキシブルスクリーン
解像度 2,200×1,650 Carta 1250(207dpi) 2,200×1,650 (207dpi)
タッチ 静電容量方式タッチ+4,096段階(筆圧検知ワコムペン 静電容量式タッチ+4,096段階筆圧検知ワコムペン
CPU Snapdragon662(8コア) 8コア(Cortex-A72+Cortex-A55)
メモリ 6GB LPDDR4X 4GB LPDDR4Xメモリ
ROM 128GB UFS2.1 64GB (UFS2.1)
ネットワーク WiFi (802.11b/g/n/ac) BT 5.0 Wi-Fi(2.4GHz + 5GHz)+ BT 5.0
ライト フロントライト(暖色及び寒色) フロントライト(寒色及び暖色)
OS Android 11.0 Android 10
ボタン 電源、バック(指紋認証) 電源、バック(指紋認証付き)
インターフェイス USB Type-C Type-C(OTGサポート)
ディスプレイ接続 - Micro HDMI
電池容量 4,300mAh 4,300mAh Polymer Li-on
電池持続時間 記載なし 最大6週間(スタンバイモード)
寸法 310×228×7.9mm 310×228×7.9mm
重量 570g 570g

 この表からもわかるように、Snapdragon 662を採用するほか、メモリが4→6GB、ストレージが64→128GBへと増量されるなど、順当にスペックアップしている。また電子ペーパーパネルはE Ink Carta 1250を採用するなど、現行のモノクロE Ink端末としては最先端にあたる仕様だ。スペック面では文句のつけようがない。

 大きな変更点としては、PCと接続して外部ディスプレイとして使える機能が廃止され、それによってHDMIポートが省かれたことが挙げられる。13.3型の画面をそのままPCのサブディスプレイとして使えるこの機能は、付加価値としてはユニークだったが、パフォーマンス的に実用性は高くなかったため、省かれたことに違和感はない。

 もっともこのことで軽量化ないしは低価格化といった影響が見られないのは、従来モデルとの比較においてやや納得がいかないところだ。570gという重量は、12.9インチiPad Pro(682g)に比べると軽量とはいえ、同じ13.3型のBOOX MAX3では490gだったことを考えると、インパクトはそれほどない。

 またソフトウェアについては、設定画面などが大幅に刷新されている(後述)ほか、Wi-Fi経由でPCとデータをやり取りするアプリが追加されたり、さらに画面の上下分割に対応するなどの進化が見られる。このほか付属のスタイラスについても、書き味を向上させたMagnetic BOOX Pen Plusが同梱されている。

 ちなみに公式スペックでは従来あった駆動時間の項目が省かれているが、バッテリ容量は従来と変わらず4,300mAh、また「1回の充電で1~2週間」使えるとの記載があるので、これが目安になるだろう。従来モデルは「スタンバイモードで6週間」という、実利用を考慮していない表記だったので、むしろこちらのほうがピンと来る。

筐体は樹脂製。縦向きでの利用を想定したデザイン。画面サイズは13.3型
本体のほかケーブル、新開発のスタイラス「Magnetic BOOX Pen Plus」が同梱される
Magnetic BOOX Pen Plus。磁力で吸着するのが売りだが、本製品は樹脂筐体なのでボディには吸着しない。ややちぐはぐだが、他モデルと共通のオプションなので致し方ない
12.9インチiPad Pro(右)とのサイズの比較。画面サイズはほんのわずかに本製品のほうが大きい
12.9インチiPad Pro(右)との厚みの比較。本製品のほうがやや厚い

設定画面がリニューアル、しかし逆にわかりにくく?

 セットアップは、Googleアカウントにログインせずに基本設定を完了させたのち、Wi-Fiなどを設定し、その上で必要に応じGoogleアカウントの設定を行なうという、BOOX独自のフローだ。かなりクセはあるが、BOOXではおなじみなので、経験者はそれほど戸惑わないだろう。

 ただし本製品は、Android 11ベースの新ソフトウェア(バージョン3.2)が採用されたせいか、一部メニューの構成が変わり、従来の経験則が通じにくくなっている。

 中でも戸惑うのはGoogleアカウントの設定で、アプリページの右上にある三本線のアイコンをタップして「アプリ」を選ぶことで設定画面が表示されるという、以前よりもわかりにくい方法に改められている。従来モデルでは、Googleアカウントは「設定」→「アプリ」から設定できたので、事実上、下の階層に追いやられた形になっている。

 なるべくGoogle Playを使わせたくないのか、それ以外の理由があるのかは不明だが、BOOX製品の経験者ほど混乱するだろう。逆に利用経験がない人は「そういうものか」と、それほど気にならないはずだ。

Google Playを設定するには、アプリの右上にある三本線のメニューをタップして「アプリ」を選択。自力でたどり着くのはまず不可能なUIだ
「アプリ」画面でGoogle Playを有効化し、その後GSF IDなどの設定を行う。従来はこの画面自体が「設定」内に存在していたので、かなり分かりにくくなっている

 一方で、ホーム画面は、基本的な構成は変わらない。左ペインに「書庫」「ノート」「設定」などのカテゴリが並び、それぞれをタップして切り替える仕組みだ。Google Playストアを経由してインストールしたアプリは「アプリ」の中に表示される。

 気になるのは「設定」で、前述のように「アプリ」カテゴリがなくなったことに加えて、「パスワード」、「ジェスチャー設定」などが単独の項目として独立している。これでわかりやすくなったのなら何の問題もないのだが、「システムバー」「システム表示」のように紛らわしい項目も増えたほか、並び順も不明瞭だ。変更にあたっての明確な方針が見えず、まとまりがないように見える。

 また画面を上から下にドロップダウンすることで表示されるパネル(システムバー)は、従来はAndroidの通知領域に似たUIだったのが、テキストラベルを廃した独自色の強いデザインに改められた。パワポで作図したモックアップをそのまま組み込んだかのような無機質さで、なによりわかりづらい。最低限、下段のアイコンにテキストラベルを残しておくべきだっただろう。

 もう1つ、実際に使ってみて気になったのは、指紋認証の精度だ。指紋センサーは画面下のボタンに組み込まれているのだが、認識率は低く、失敗した時の表示もわかりづらい。今回の評価中にしばらく試してみたが、実用レベルにないと判断し、無効化してしまった。

 さらに指紋を登録するにあたって必須となるパスワードの登録では、一旦設定したパスワードがリセットできない制限もある。従来モデルでは筆者はこの機能を試しておらず比較ができないのだが、本製品の挙動を見る限り、早急な改善が必要と言っていいだろう。

指紋認証のセンサーは画面下にあるボタンに埋め込まれている。指紋は複数登録できるが、認識率はお世辞にも高くない
指紋を登録するためにはパスワードを設定する必要がある。リセットがサポートされていないなど機能面ではやや難がある

解像度がややネックも、動作は高速でストレスなし

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の2021年冬号を使用している。ストアはKindleストアを基本に、ebookjapan、DMMブックスも試用している。

 本製品は13.3型というビッグサイズゆえ、コミックの見開きでは、原寸を上回るサイズでの表示が可能だ。ただし解像度は207ppiという、12.9インチiPad Pro(264ppi)よりもやや低い解像度のせいで、ジャギーが生じやすい。見開き表示ではこれが顕著だ。

 また雑誌の単ページ表示もほぼ原寸で行なえるが、こちらもやはり解像度が原因で、注釈サイズの細かい文字は読みにくさを感じる。さらに画面はモノクロになるので、カラフルな雑誌の表示には向かない。むしろ技術書だったり、あるいは取扱説明書やマニュアルを表示する用途のほうが適している。

コミックを単ページ表示したところ。雑誌よりも大きいサイズで迫力満点だ
画面を横にして見開き表示にしたところ。縦横の切り替えは手動で行う
紙のコミックと比べても本製品のほうが一回り大きい
12.9インチiPad Pro(下)との比較。ほぼイーブンといっていい大きさだ
画質の比較。上段が本製品、下段が12.9インチiPad Proで、左が単ページ表示、右が見開き表示。顎のラインや髪の先端に、本製品の解像度の低さが顕著に出ている。iPadは単ページ・見開きともに大きな差は感じない
雑誌を実物と比較したところ。サイズはほぼ同等だ
12.9インチiPad Pro(右)との比較。本製品のほうがほんのわずかに大きい
本文中でもっとも細かい文字の比較(単ページ表示)。上が本製品、下が12.9インチiPad Pro。読めないわけではないが文字のかすれが目立つ

 以上のように細い線や小さなフォントの表示では解像度がやや足を引っ張りがちだが、ページめくりの速度は十分に実用的だ。Snapdragon 662×6GBメモリの合わせ技か、タップやスワイプを行なってから実際に反応するまでのレスポンスも高速で、ストレスがたまらない。長く使う上で、これは大きな魅力だろう。

 また画面を横向きにした場合も、違和感なく利用できる。ジャイロセンサーは搭載しないため縦横の切り替えは手動になるが、かつてのBOOXシリーズのように外部のユーティリティを導入しなければ任意の向きに回転できないといったこともなく、スムーズに見開きへの変更が行なえる。本体がもう少し軽ければ……と感じなくもない。

 なお今回の新しいソフトウェアでは、濃度などの調整機能は、通知領域にある「E-ink中央」なる項目(E Inkセンターの誤訳。設定画面では正しく表示されている)にまとめられている。画面の濃淡やリフレッシュのモードなど、E Inkにまつわる調整を行いたければ、まずはここを開くことになる。わかりやすさという点で、一歩前進した印象だ。

 一方でアプリ単位の最適化は、従来と同じく「アプリ」で該当アプリのアイコンを長押しすることで設定画面が表示される。ネックなのは、この「最適化」が、前述のE Inkセンターの項目とどう影響し合うのか、どちらが優先されるのか、やってみなければ分からないことだ。実際に数値を変更しても、どこに反映されたのか確認できないことすらある。

 また「ページめくり時間でアニメーションをフィルタする」のように、具体的に何を指すのか分からない説明も見受けられる。パラメータが多いのは悪くないのだが、それはどこに作用するのかがきちんと説明されているのが大前提で、もう少し分かりやすくならないものかと思う。これらは従来よりむしろ悪化した印象すらある。

ハードは文句なし、ソフトウェアまわりの改善が課題か

 以上のように、従来モデルからの大きな違いとしては、パフォーマンスの向上と、サブディスプレイ機能の廃止が大きなポイントということになる。サブディスプレイ機能は、これまでも実用レベルではなかったので、本筋の機能に注力するかたちで進化したのは悪いことではないと思う。

 価格はわずかに上がり、10万円をわずかに超えてしまっているが、スペックが向上していることを考えるとやむを得ない。本稿で比較した12.9インチiPad Proもそうだが、もともと13型前後のデバイスの多くは10万円を超えているので、割高というわけでは決してない。

 一方でソフトウェアまわりの刷新が必ずしもわかりやすさの改善につながっておらず、ローカライズも不十分だったりと、これまでのBOOXらしくない点はやや気になる。本製品が発売直後ならばまだ理解できるが、本稿執筆時点(1月上旬)の時点ですでに発売から2ヶ月が経過しているだけに、なおさらだ。

 本製品は製品発売日から3年間のファームウェアアップデートが保証されており、モデルチェンジが速いBOOXシリーズの購入を後押ししてくれるのだが、それはソフトウェアがある程度こなれていることが大前提だ。ハードは正常進化を遂げており文句のつけようがないだけに、そのあたりの見直しを図ってほしいところだ。

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