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Saturday, December 3, 2022

疲れているのにスマホに依存…脳の専門家に聞いた「スマホ脳」を改善するヒント| - @DIME

「スマホ脳」は脳が疲労してしまう状態

少し前まで「ゲーム脳」という言葉が流行したが、それと入れ替わるように「スマホ脳」という言葉を方々で聞くようになった。

これは改めて説明するまでもなく、1日のかなりの時間をスマホの操作に費やしてしまい、脳が疲労してしまう状態を指す。医学的に厳密な定義があるわけではないが、一種の依存症といえるかもしれない。

■スマホ脳は脳が「執着」しラクをしている状態

このスマホ脳を、依存とか中毒という言葉ではなく、「執着」という言葉で説明するのは、加藤プラチナクリニックの加藤俊徳院長だ。

脳の専門家である加藤院長によれば、執着とは、「物事に心が深くとらわれ、ずっと離れない状態」だと、著書『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)の冒頭で説明している。

なので、上司から嫌みをこめて叱責されたのが忘れられないのも執着だし、フラれた恋人のことを何度も思い返してしまうのも執着といえる。おそらく、誰もが何らかの執着を抱えて日々生きているはずで、執着は人間の性といえるかもしれない。

ところでこれは、脳の働きという観点からだと、別の面が見えてくる。加藤院長によれば、「執着するときは、脳はラクをしている」のだという。そして、上に挙げた著書の中で次のように説明を加えている。

何かに執着すると、脳はその執着の対象を思い出したり行動したりする際、しだいに効率よく働くようになります。効率がいい、つまりラクなので、脳はその思考・行動を繰り返します。するとその回路が強化され、放っておいても同じことに執着し続ける仕組みが出来上がるのです。

スマホ脳の場合、スマホ操作にかかわる脳の回路ばかりを使い続けた結果、スマホを使うのがラクになって、やめられなくなったということになる。加藤院長は、スマホ脳から脱出する方策を本書で提示しているが、その前にもう少し専門的な話を続けよう。

■「とにかく歩く習慣」でスマホ脳を改善

脳には1千億を超える神経細胞が存在している。膨大な数の神経細胞のそれぞれが、考えたり、記憶したりと、独自の役割を持っている。そして、似た役割を持つ神経細胞同士は集まって、集団をなしている。

その集団の居場所を、加藤院長は「脳番地」という概念で表現する。脳番地は全部で約120あるが、8つの系統に大別できるという。

例えば、「思考系脳番地」は物事を考えたり判断を下したりするときに働き、運動系脳番地は体を動かすことに関わるときに働く、といった具合だ。

すべての脳番地が十分に発達しているという人はまずいなくて、たいていは強い脳番地がいくつかあり、それらを集中して使う傾向があるという。

また、特に働きが弱い脳番地があると、能力・性格上の欠点として表面化する。一例を挙げれば、思考系脳番地の働きが弱いと、やる気が出ず、優柔不断になりやすいそうだ。

今回の記事のテーマである執着については、これに苦しむ人の多くは、「思考系、感情系、記憶系の脳番地に限定してひたすら活用」しているという。

そして、「スマホを手放せない」という執着は、記憶系の執着になるそうだ。だが、これを攻略するのは記憶系脳番地ではなく、まったく別の運動系脳番地の強化がカギになると、加藤院長は説く。そのための具体的な鍛え方の1つが、「とにかく歩く習慣をつける」こと。

考えがマンネリ化していると思ったら、とにかく10分~15分程度歩いてみましょう。ただ歩くだけでなく、歩幅を広げたり、スピードを出したりすると運動系脳番地が刺激されます。

階段を上り下りするときも、安易にエスカレーターに頼らず、階段を使ってみましょう。階段を前にしたら「チャンスだ」と思いたいところです

周りの人に注意しつつ、一段飛ばしで上るのも良いでしょう。足腰も鍛えられますし、時間の節約にもなるのでいいことずくめです。(本書223pより)

他の方法としては、利き手と逆の手で歯磨きをする、旅行に出て新しい記憶を作る、普段の生活で会話を増やすというものがすすめられている。

「会話は運動なのか」と疑問に感じるかもしれないが、専門的には「口腔運動」といって、運動系脳番地の立派なトレーニングになるそうだ。

言うまでもなく、スマホでSNSやメッセージのやり取りをしているだけではまったく口腔運動にならない。積極的に家族・職場の人たちと話をする機会を増やす心がけが肝心だ。

ここでは割愛したが、恋人を束縛してしまうといった人間関係の執着や、つい頑張りすぎてしまうといった仕事関係の執着など、様々な執着を改善する処方箋が本書には掲載されている。もしも、こうした執着から起きる悩みを持っているなら、こちらを参考に改善に努めてみると良いだろう。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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