野菜スープづくりに励んでいる。きっかけは、「原っぱ」の隣で始まった「好き勝手農園」のおかげかもしれない。
勝手に野菜を収穫し、自分で好きに値段を決めて、缶に入れておく、このシステムの自由さがいい。
が、野菜には収穫時(とりいれどき)というものがある。「まだまだ」というときも、「今、採らなくていつ採るの?」というときもあって、しばしば食べきれない野菜で篭(かご)がいっぱいになったりもするのだ。
ジャガイモ、タマネギ、ニンニク、ニンジン、レタス、キャベツ、ズッキーニ…。篭の中の野菜は、まずサラダに。次に炒めて、さらに煮込んでポトフにし、残ったら冷凍。最後はそれを一気にミキサーで、おいしいポタージュスープに変身させるのだ。
そんなわけで、今や朝も昼も毎日が野菜スープの日になった。
手元には、移住のときに持ってきた思い出のジューサーがある。
それがまさかの出番となった。
十数年も前のこと。
90歳を過ぎた父が入居したばかりの老人ホームで、体調を崩して食事がとれなくなったことがある。
そのとき、「胃瘻(いろう)はしない」と宣言していた父の意志に沿い、重湯をスプーンでひと匙(さじ)ずつ、という方法で乗り切ることになった。
そのとき、父と長く暮らしていた私としては、なにかせねばと焦り、近所のその老人ホームまで「スープ」を作っては持っていった。
かの有名な辰巳芳子先生の「あなたのために-いのちを支えるスープ」の本に書いてあるレシピ通りに作ったのだ。
レシピの文章は品位に満ち、美しく、料理が得意ではない私をいたく感激させた。もう憑(つ)かれたようにスープづくりに励んだ。
当時のわが家の冷凍庫は、辰巳先生推薦のお取り寄せチキンスープのもとで満杯になっていた。
それを使っても、手間がいっぱいかかったスープづくりだったが、父は「おいしい」とそのスープを飲んでくれた。
ホームで暮らす親しい入居者の方たちにも試食を頼んだら、皆が「最後に飲みたいスープだよ」とまで言って励ましてくれた。
このスープは父の命を支えてくれたのに、気がつけば作り方を今やすっかり忘れている。そんな自分にはあきれるが、レシピ本を眺めていると、再挑戦してみよ、と言われている気がする。
さらに、あのときの父の「おいしい」は、「努力は報われるよ」という娘への最後の教訓だったかなあ、とさえ、思えてくるのである。(ノンフィクション作家 久田恵)
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July 31, 2020 at 05:00AM
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【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(651)命を支えたスープ - 産経ニュース
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