東京日本橋の中華レストラン「リバヨンアタック」料理長の人長良次(ひとおさ・よしつぐ)さんに教えてもらいます。
今回の焼売のレシピは、お店で出してるものとは違うヤツ。
『メシ通』向けのオリジナルレシピを考えてもらいましたよ。
点心は四川料理とは違うけど……?
人長:今回は焼売です。焼売というのは、いわゆる点心なんです。点心ってのは広東が中心地で、四川料理とは言えないんですけど、でも僕は点心が好きなんです。点心で腹一杯になりたいんです。
──なんだか熱量が違うな。
人長:今回は肉焼売とエビ焼売の2種類をつくります。ポイントは3つ。
- 計量をしっかり
- 玉ねぎの切り方
- 焼売は包むのではなく「握る」
──3つのポイント、心得ました。
肉焼売(52個ぶん)
材料
- 豚バラブロック 500g
- 醤油 60g
- 塩 12g
- 砂糖 30g
- 酒 15g
- 生姜のすりおろし 5g
- 卵 1個
- 干しシイタケ 50g 水(分量外)で戻しておく
- ラード 10g
- 玉ねぎ 500g
- 片栗粉 60g
- ごま油 20g
- 焼売の皮 52枚程度
手順の概要
- 玉ねぎを切ってペーパーで水気を取る
- シイタケをみじん切り
- 豚肉を細かく切る
- 調味料を計量する
- ボウルに具材を入れて混ぜる(肉→調味料→卵→シイタケ→ラード)
- 玉ねぎに片栗粉をまぶし、肉と玉ねぎを混ぜて、ごま油を入れて、冷蔵庫で寝かす
- 焼売を「握る」
- 蒸籠で蒸す
エビ焼売(23個ぶん)
材料
- むきエビ 250g 解凍しておく
- 塩 2g
- 昆布茶 2g
- 砂糖 7g
- 胡椒 少々
- タケノコ水煮 100g
- 干しシイタケ 50g 水(分量外)で戻しておく
- ラード 20g
- 片栗粉 20g
- ごま油 2g
- 焼売の皮 23枚程度
手順の概要
- タケノコ、シイタケをみじん切りにする
- エビを洗い、水気を取る(サイズを選んで買おう)
- 包丁でエビを叩く(つぶす)
- エビに調味料を入れて、よく練って粘りを出す
- タケノコ、シイタケを入れ、ラード、片栗粉、ごま油を加えて混ぜ、冷蔵庫で寝かせる
- 焼売を「握る」
- 蒸籠で蒸す
肉焼売
人長:肉焼売とエビ焼売がありますが、まずは肉焼売をつくりましょう。
玉ねぎと肉が500gずつ。これで52個つくれます。つくれますというか、試作したらそうなりました。
──実際にやってみたんですね(笑)。あざす! これじゃ多すぎるという場合はどうしましょう。
人長:冷凍保存できます。必ず、握って蒸してから冷凍ですよ。生のままだと水が出て最悪です。
──焼売を蒸してから冷凍ですね。
玉ねぎを切る
人長:先に玉ねぎから切っていきましょう。水分をきる時間がかかるので先にやっておきます。上と下、固いところは落として、と。
──刻む前の状態で重さを量ると。
人長:ポイントのひとつめ。「計量をしっかり」ですね。点心は分量をちゃんと量ってほしいんです。なぜ計量をしっかりするかというと、点心は後から味の調整ができないからです。
──なるほど。餃子のときと同じですね。途中で味見ができないという。
人長:ポイント2つめ。玉ねぎの切り方です。あまり細かくしすぎない。ちょっとゴロっと切ります。普通、玉ねぎのみじん切りって、鷲谷さんどうやって切ります?
──まずブサブサに切り込みを入れて。碁盤の目状というんですか。
人長:そうそう。縦横に包丁を入れて、ってやりますよね。僕も、料理人になるまではそうだと思ってたんですけど。中華って、まず半分に切って、繊維を断ち切るように横方向に切れ目を入れるんですよ。
人長:すると、縦横に包丁を入れなくても、すでに玉ねぎの皮が重なって別れているので、普通に切るだけでみじん切りになるんですよ。
──おおおおお。すーげー!
人長:あと、できればですけど。玉ねぎの曲面に合わせて扇型に包丁を入れていくんです。
──まな板に垂直ではなく、玉ねぎの重なりに対して垂直方向に切るんですね。
人長:そうそう。ただまっすぐに切ってしまうと、最初のほうが長くなっちゃう。
──速いー。俺これ泣きながらやってんのになあ。
人長:これは、包丁が切れるから目に染みないんです。さっき一生懸命研いでおきました(笑)。
──なるほどー。玉ねぎの重なりを利用してなー。
人長:聞けば当たり前のことなんですけど、調理実習とかでも「玉ねぎは十字に切り込みを入れて……」と教わってたんで。中華ってすげえなと思ったんですよね。
人長:大きさも、ちょっと荒いんですよ。なんていうんだろう。BB弾よりもデカいですね。
──プレステの十字ボタンの1個ぶんくらいですね。
人長:そうそう、それ(笑)。
──そんな目安があるか。
人長:玉ねぎを切ったらボウルの底にペーパーを敷いておいて、水分を吸ってあげます。でないとベチョベチョになりやすいので。
人長:こうしてペーパーでくるんで、しっかり水気を取っておきます。
──これで泣いてるといいオチがついたんですけど。
人長:すみません、腕がいいんで(笑)。
シイタケを切る
人長:次にシイタケを切ります。
──干しシイタケは前の晩から水で戻しておくんですね。
人長:そうですね。石づきはハサミで切っておきましょう。
人長:うっかり戻し忘れた人は、茶碗にお湯張って、砂糖をひとつまみ入れて、ラップして軽くレンチンすれば戻せます。砂糖を入れることで浸透圧の関係でお水が中に入っていきますので。
人長:シイタケはみじん切りにします。このままワシャワシャと切ってもいんですけど、スライスしてあげたほうが、ラク。
──ははあー。
人長:スライスしてから、細切りにするわけです。
人長:玉ねぎは食感も含めてのことなので荒く切りましたけど、シイタケは出汁というか、味がしっかり出るものなので、なるべく細かく切ります(トントントントン)。
人長:ちなみにいまこれくらいです。
──2、3ミリですね。厚みはさらに薄い。
人長:細切りにしたシイタケを刻みます。
──1ミリ弱くらいですかね。普通に切るとシイタケの厚さよりも小さくできなかったんですけど、斜めスライスすればよかったんですね。
人長:そうなんです。
肉を切る
人長:肉を切ります。これは豚バラ、およそ500gのブロックです。お肉はぜんぶ切ってから重さを量りますね。
──おすすめは豚バラという。
人長:いえいえ。バラでも肩でもいいですよ。
──肉を買ってくるときの目安なんですけど、脂身の量とかはどうですか。
人長:あまり脂が多すぎないほうがいいかもしれないですね。焼売を蒸したときに脂が溶けて中がスカスカになるかもしれないです。
──脂肪が溶けて流れちゃうんすね。
人長:これを切ります。厚さは3ミリくらいかな。
人長:細切りにします。1.5ミリ。
人長:包丁はしっかり寝かせましょう。そのまま切ってると包丁に肉がくっついちゃう。これは切りづらいので、包丁を寝かせて、まな板に肉をくっつけてあげる。
人長:次にこれを細かく切るんですが。中国語だと「ソン」っていうんです。「鬆」と書きます。
──みじん切りという感じですね。
人長:これも十字ボタンと同じくらいのサイズに切ります。
──タ・タンというリズムでバンバン切っております。
人長:「肉を切る」「包丁を寝かせて、切った肉をまな板に貼り付ける」。これを早くやるとタ・タンというリズムになるんです。単調なリズムで切ると、包丁に肉がどんどんくっついてしまうんです。
──ブロック肉をみじん切りにしていますが、これ、最初からひき肉を使うのはどうですか。
人長:たしかにちょっと手間なんですけど、このひと手間が焼売をおいしくするところなので、お時間がある人はぜひチャレンジしていただきたいです。
──ひき肉でもできるけど、ハンドチョップのほうがおいしくなる、と。
人長:もちろん、もちろん。ひき肉を買ってきてもいいんです。ただ、細かいのよりは、なるべく粗挽きのほうがいいです。
そして豚ひき肉がいいですね。牛のひき肉は、焼売にするとなんかパサパサしちゃうんですよね。
──A5ランクの和牛ならたぶん負けないぞ。
人長:そんなの焼売にしたりしないでそのまま食べたいですわ(笑)。
──肉を刻んでから、ちょうど500g量ります。
肉を練る
人長:粘りを出したいので、肉を練る前に調味料を入れます。
人長:肉に、醤油、塩、砂糖、酒、生姜。調味料は事前に量っておくと楽です。
- 醤油 60g
- 塩 12g
- 砂糖 30g
- 酒 15g
- 生姜のすりおろし 5g
人長:生姜は、できればチューブではなくフレッシュをすりおろして使って欲しいです。というのは、チューブでも試してみたんですけど、やっぱりフレッシュ生姜の方が香りがいいですから。
──包むものなので気になっちゃうところですしね。せっかく肉を手切りしたんだから、味付けもちゃんとしたいですね。
人長:調味料は、まず粉ものから。塩12g、砂糖30gを入れて軽く混ぜます。ざっくりでいいですよ。
人長:次に生姜のすりおろし5g、酒15g、醤油60g。
人長:そしてしっかり混ぜます。滑っちゃうんで、ボウルの下にタオル敷くといいですよ。
人長:次に卵、割って入れます。
人長:そして混ぜるときは腰を入れる。腕だけでやると疲れちゃう。
──すごい回転数です。120RPMくらいあります。
人長:手はこれです。「ピューマの手」ですね。
──とりあえず「熊の手」と書いときますね。
人長:しっかりと練ってあげて、粘りを出してください。肉の色が白っぽくなるまで混ぜます。最初はけっこうゆるいんで「ホントに粘るの?」と不安に思うかもしれませんが、安心してください。粘りますよ。
──醤油が、大さじ換算で言えば4杯も入ってますから、はじめはけっこう水っぽくなりますよね。
人長:でも、もうお肉が水分を吸ってるんですよ。ほら水気は無いでしょ。
人長:お肉に下味を染み込ませているんですよ。これと同量の玉ねぎが入るんで、ここで味をしっかりしておかないといけないんですね。
──お店レベルの量だとマシンで練るんですよね。手の熱が入らないから、脂がダレる前にちゃんと練れておいしく仕上がるという。
人長:修行時代はこうして手練りをしてたんですよ。それも大事なことで、マシンを使う前にそういうことを身を持って知ってるか知らないかは大事なんです。
人長:お肉に粘りが出てきました。白っぽくなってますね。そしたらここに、シイタケ。
人長:そしてラード10gですね。このラードですけどね、お肉の脂身を取り除いたものを冷凍しといてですね、使うときにボイルして、それを細かく切って使ってもオーケーです。
──チャーシューや豚の生姜焼きとかをつくったときに削いだ脂肪部分をここで活かせるということですね。うひょー。
人長:そういうことです。で、これを混ぜます。
人長:(1分弱練り回す)こんな感じになりました。
人長:手の熱で温まっちゃったんで、冷蔵庫に入れておきます。
──冷やしておいた方が調理時に扱いやすくなるという狙いですか。
人長:脂が温まってると、握る時にダレるんですよね。しっかり固まった状態のほうが握りやすいので、冷やしておきましょう。
玉ねぎに片栗粉をコーティングする
人長:肉を冷ましている間に、玉ねぎをやりましょう。
──玉ねぎを、やる。
人長:さきほど切って、ペーパーで水気を抜いている玉ねぎですが、このまま入れてしまうと、結局は水分が出やすくなってしまうんです。練ると組織が壊れる。そこに塩分が入ると浸透圧で水が出てくる。これを防ぐために片栗粉をまぶします。
──切った玉ねぎをそのまま使うと、焼売がビシャビシャになってしまうという。
人長:入れる目安なんですけど。いま触ると玉ねぎが手にくっつきます。水がついてるからです。こんなふうに手にくっつかなくなるように、片栗粉で玉ねぎをコーティングします。玉ねぎ500gに対して片栗粉60gなんですけど、いっぺんに入れないでください。
人長:なんでこうやって片栗粉を少しずつ入れるかというと、片栗粉を一気に入れたらそりゃ玉ねぎは一気にサラサラになりますよ。なりますけども、焼売ができあがった時に、片栗粉効果でモッチモチのモッチモチになってます。これはおいしくない。かといって片栗粉が少ないと、こんどはベチャベチャな水っぽい焼売になってしまう。
その、ちょうどいい目安が「玉ねぎのみじん切りが手にくっつかない状態」。これがひとつのポイントなんですね。レシピでは60gと書いてありますけど、これは絶対ではない数字です。
──玉ねぎの調子によって、片栗粉の量は変わるんですね。
人長:たとえば、新玉ねぎだと水分が多いので、片栗粉は今回よりもたくさん使うことになります。新玉ねぎ、甘くておいしいんですけど、焼売に向いてないんですよね。
人長:これだとまだですね。
人長:玉ねぎに片栗粉をちょうどよくまぶすと、こんなにポロポロサラサラになるんですね。
──おおー。
人長:ボウルの底を見てください。下に片栗粉がたまらない程度がいいんです。
──多くもなく少なくもなく。ちょうど片栗粉がぜんぶ玉ねぎにコーティングされる量。
人長:そうです。これがプロのワザです(笑)。たぶんご家庭ではやらないことですよね。
──そもそも知らないというか、玉ねぎの水分については思い至らないですね。なんかいい感じの豆大福みたいな表面ですね。
人長:あああーいいですね。豆大福大好き。口の周りが真っ白になっちゃうんですよね。黒い服で豆大福食べるとここらへんに粉がついちゃって大変なんですよね。
──豆大福でテンション爆アゲ↑なんですけど。
人長:好きなんですよ、豆大福(笑)。
肉、玉ねぎ、シイタケを混ぜる
人長:さてお肉が冷めて固くなりました。
──混ぜるときってボウルはデカいほうがいいですよね。
人長:コツなんですけど。「お肉に玉ねぎ」を入れるんじゃなくて、「玉ねぎにお肉」を入れます。
人長:そしてこのお肉に玉ねぎを「植え込む」。ただグワーっと混ぜると玉ねぎから水が出ちゃうんですよ。
──せっかく水分を抑えたわけですから、ここは手順注意ですね。
人長:こうするとボウルの下にお肉が張り付いてないから、玉ねぎでお肉を包むみたいなことになりますよね。
人長:要は混ぜてこねる数をできるだけ少なくしたいんですよ。混ぜる回数が少なければ少ないほど、玉ねぎから水が出ない。なので、なるべく優しく植え込んであげる。
──これもう、お料理工学、お料理エンジニアリングじゃないですか。
人長:肉が先だと、底にこびりついてる脂とかを玉ねぎできれいにぬぐっていかないといけない。玉ねぎが先に入ってれば、少ないコネ数で混ぜられるわけです。
──お肉のボウルに玉ねぎを入れる方法だとすごく一生懸命練らないといけなくなって、玉ねぎがつぶれちゃうということですね。よく考えたら、焼売の中身についてこんなによく考えたことないですね。
人長:最後に香り付けのごま油を。そっと混ぜます。ごま油は20gです。
──なるべく少ない手数で混ぜきることが大事と。ぜんぜん水が出てきてないですね。
人長:はい、アンコ完成です。平たくして冷蔵庫で冷まします。
エビ焼売
人長:次はエビ焼売です。エビは業務用の冷凍エビでオッケーです。エビって大きさで値段がかなり違うんです。大きいのって高いんですよ。今回はそんなに大きくなくていいです。
人長:ただ、エビは大きければ大きいほどプリプリしてて、小さいのはそうでもない。そこはご予算次第でやっていただきたいです。
エビを叩くとまな板が汚くなっちゃうんで、手順としては先にタケノコとシイタケを刻みます。
タケノコとシイタケを切る
人長:タケノコは100g使います。
人長:下は硬いんで落として。
──すごい、ちょうど100gになってる!
人長:スライスして。
──タケノコは節があるので、最初からいい感じで細切り済みになってますね。
人長:これをみじん切りにします。あまり細かく切ると食感がつまらなくなるので、ある程度大きさを残して。
人長:サイズの目安は、キン消しの拳のサイズ、このくらいですね(笑)。
──キン消しの、拳サイズ。わかる人とわからない人がはっきり分かれる喩え。
人長:シイタケはさっきと同じ切り方です。
人長:干しシイタケは入れてあげると出汁が出ておいしいので。水で戻すのがめんどくさい場合は、生シイタケでもいいですよ。まいたけでもいいです。
──生シイタケは、お家によっては「ちょっと裏行って取ってきて」みたいなことができますしね。
エビを押しつぶす
人長:むきエビは解凍した状態で250g。エビをざっと洗い、水気はペーパーで巻いてしっかり取ってください。水気があるとベチャベチャして水っぽい焼売になってしまいます。
人長:で、エビは包丁でこうやって押してつぶすんですけど。中華包丁はビタンと叩きつぶすことができるんです(ビタン!)。
──いいなあ。
人長:包丁で押しつぶすときは、あまり力を入れてやらないでください。あるていど雑にやって、食感を残して欲しいんです。完全にすり身にしちゃうと、プリプリじゃなくてフワフワになっちゃうんです。軽くつぶす程度でいいです。
──ご飯を完全につぶすとお餅になるけど、この場合は粒を残す、おはぎ程度のつぶし方って感じですかね。
人長:あー、そうですね。
──そのつぶし方を「半殺し」っていうんですよ。きりたんぽとかの方法。
人長:手で練る時にさらに細かくなるので、この段階ではホントに軽く、身を残すようにつぶします。はいこれで切りものは終了です。包丁はもう使いませーん。
エビ焼売のアンコを練る
人長:では、いきます。昨日練習したから手順はぜんぶ頭に入ってるんで(笑)。エビをボウルの中に入れます。
人長:エビに調味料を入れます。
- 塩 2g
- 昆布茶 2g
- 砂糖 7g
- 胡椒 少々
人長:入ってるものはシンプルなんですよ。エビを楽しんでいただきたい焼売です。昆布茶はけっこう旨味になるんですよ。胡椒はあとで入れます。
──昆布茶がなければ、うま味調味料でも?
人長:なければ、それで。仕方ないです。
人長:これをよく練って粘りを出します。
人長:滑っちゃうんで、ボウルの下にタオル敷きます。このときにさっきのエビがちぎれていくんですが、ちぎれるところもあったり、そのままのところがあったり、っていうのが食感がいいんですよ。
──わかるー。均等にならないほうがいい。
人長:ここで胡椒を入れます。パッパッパーと5〜6回くらいですかね。
人長:手の熱が入ると赤くなってきちゃうんで、エビも機械で練るのがいいんですけどね。エビは手早くいきましょう。前の手順でしっかり水気を取っているんで、お塩を入れて練っても水は出てこないですね。
──下準備が大事なんすね。
人長:そうそう。この状態をつくるために、水気をちゃんと取っておくんですね。ここの練りが甘いと、食べた時にやっぱりまとまらないんです。練っていると、パラパラだったエビがまとまってきます。
人長:こういう感じでまとまりましたね。おダンゴになりました。
人長:ここにタケノコ100g入ります。シイタケ50g入ります。ラード20gですね。ここでいったん混ぜます。
──このタイミングで混ぜるんですね。
人長:ラードを全体に行き渡らせたいんですよ。ラードは……旨味っていうか? エビは肉と違って脂っけがないじゃないですか。そこをラードで補いたいんですよ。
人長:そして片栗粉20g。これを入れないとまとまらないんで。接着剤というか、エビとタケノコくん達を仲良くさせるための白い粉です。
人長:全体に片栗粉が行き渡ったら、ごま油2g。サクッと混ぜて。
人長:これで冷蔵庫で寝かせます。肉焼売と同じく、握りやすくするためです。
焼売を「握る」
人長:焼売を握りますよ。包むのではなく「握る」ですよ。皮の色が違うのは肉とエビを見分けるためで、味は変わらないです。
人長:アンベラ。本来は金属のやつなんです。こっちの竹のやつは僕の先輩が香港でお土産に買ってきてくれたものです。タケコプターじゃありません。
──餃子の回では「竹とんぼ」でしたぞ。
人長:あ、餃子の回でもやりましたね、でへへ。
人長:ひとつ30gで握ります。
──重さはあくまで目安ですよね。
人長:そうですね。僕らは商売なんでプラスマイナス1gの誤差で握りますけど、ご家庭ではこれくらいを目安に握る気持ちで。このサイズなら食べやすくて火の通りもちょうどよくなります。
人長:すくいますよね。手をお椀型にして、アンを詰めてあげるんですね。真ん中にアンベラをつっこんでまとめてあげるんです。
人長:回す、握る、回す、握る。これでおおまかにまとめます。
人長:で、逆さにして、てるてる坊主にして、アンベラを抜き取る。
人長:すると、この状態になってる。
──その、くるくる回すときにアンベラを差し込んでいるのは、どういう働きをしているんですか。
人長:突っ込まないと回しにくいんですよ。
──ああ、回すためのハンドルみたいなものなんすね。
人長:これでいちおう形としては包まれてますけど、もしこのまま蒸すと焼売はどうなるか。口の中でボロボロっと崩れてしまいます。肉が詰まってないんです。
だから「握る」んです。
人長:握るとアンコがニューっと出てきますね。出てきたのを上から押す。
人長:握る、押す、回す、握る、押す、回す、この繰り返しです。
──握って出てきた肉を詰めて、密度を上げていく。
人長:すると、食べた時にお肉がギュッと詰まってる焼売ができるんです。なおかつ、玉ねぎがお肉と同量入ってるんで、玉ねぎの甘みがすごく感じられる。
フニャフニャの焼売って食べてても気持ち悪いというか、おいしくないんで。密度があるほうが絶対においしいんで。だから「包む」ではなく「握る」と言っているんですね。
──握りしめる、くらいの気持ちで。
人長:いや、もう「抱きしめる」ですね。
──なに言ってんだろなー(笑)。
人長:はいこれで30gです。
──ジャスト! すっげー! わっわっ、もっとゆっくり教えてください!
人長:てるてる坊主の状態から、こう返す。
人長:人差し指と親指はOKサイン。これで直径を決める。
人長:中指と親指で焼売をくるくる回してあげる。
人長:その間は、薬指で底を平らにしています。
人長:上からギュッと押し込む。大きさ決める。回してあげる。底を平らにする。この一連の動作を連動して、握っていきます。
──すると高さは自動的に指2本ぶんになる感じなのかな。人差し指と中指。
人長:まあ、ギューッと握れば高さはもっと出ますけど。できれば高くしてほしいんですよね。蒸し上がったときに握った高さのままキープされることはなくて、絶対ダレるんですよ。そのために、なるべくこのラインにくびれをつくってあげてください。
人長:焼売ってどうしてもアンが沈んでいくんで、くびれをつくることで形を保てるんですね。でないとバサーと開いていってしまうんです。
──筒状ではなく、ツヅミ型。ヨーグルト風の駄菓子の形ですね。
人長:そうそう。蓋の裏にアタリハズレが書いてあって。あれ、ものすごい大きいのもありますよね!
──スプーンでもアンベラでもできるんですよね。オレ、バターナイフでやろうっと。
冷凍保存のしかた
人長:握って、蒸してから、冷凍してください。玉ねぎが生のまま凍らせると水が出てビチョビチョになっちゃうんで。
エビ焼売も握る
人長:次はエビ焼売です。
人長:これも30gで握ります。肉焼売と同じです。修行していたホテル時代のことなんですけど、新人の1年生も、10年やってるベテランも、みんな一緒に焼売を握るわけですよ。で、基準になる重さから一番離れた重さに握っちゃった人がジュースを買ってくるお使い係(笑)。
──わはは、体育会っぽいすねー。
人長:これ完全に1年生が不利なんですよ。でも負けたくないから必死にやるじゃないですか。で、結果、ベテランの人がわざと軽めに握ったりしてね。やっぱり先輩は一生懸命ちゃんとやってるヤツを見てるんですよ。
──どうやって重さがわかるようになるんですか。
人長:指の輪っかの大きさで、大体の重さがわかるようになってきます。
──さすがに経験の重さがありますね。そして焼売の握り方の連動性。人長さん、乳搾りもできそうですね。
人長:やったことありますよ。千葉の有名な牧場で。めっちゃ上手かったですよ。シャーシャーシャーって。
──焼売がちゃんと握れるようになると、乳搾りも上手になれると。
人長:なります。焼売握りと乳搾りはイコールです。間違いないです(笑)。
──そうかなー。そうなのかなー。
焼売を蒸す、焼く
人長:蒸す場合は、蒸籠で10分です。
人長:蒸籠がない場合、鍋とザルを使って蒸すこともできます。お皿などで底上げして、ザルがお湯(分量外)に浸らないようにします。
人長:水が溜まるのでクッキングペーパーに穴を開けたほうがいいですね。
──底というか、一番下になるところに爪楊枝とかでツンツンして穴を開けるといいですね。
人長:フタをして10分蒸しますよー。
人長:焼き焼売の場合です。サラダ油(分量外)をひいてもらって、フライパンが温まってから焼売を並べて。パチパチと音が鳴ってるのわかりますか。
人長:パチパチ鳴ったくらいで水(分量外)を入れます。跳ねるんで注意してくださいよ。
人長:フタをして中火で5分で完成です。
食べましょう
人長:蒸籠パカー。
──おおー、湯気が。うまそうな匂いが。
人長:お肉を手切りにしたので、こういうふうに見た目がしっかりしてるんですね。ひき肉だと、この「肉感」が出ないんですよ。
人長:これは見るからに肉っていう感じでしょー。
人長:これは……酢醤油で決まりですね。カラシもあるとなお良しですね。
人長:そして、ご飯にポンポンして、焼売を、そしてここのご飯を。
人長:うめ!
──すげーうめー! 下味が効いてるってこういうことですね。肉の「ゴロリ感」がすごい。玉ねぎの甘みに対して酢醤油が合う、ご飯が進む。
人長:エビ焼売もパカー。
人長:これいいですね。
人長:エビは、まず何もつけずに。
人長:エビのプリプリと、タケノコのシャキシャキが、……うまい!
──エビの味、プリプリ食感に、タケノコのシャキ感がいいですね。リズムが出る。すごいすごい。
人長:蒸すのがめんどくさいという方のための焼き焼売。これは蒸しとは違ううまみがありますね。焼かれて味が濃くなってるというか、肉感が強くなってます。これもめちゃウマです。
──焼き焼売は、味がギュッと詰まっているというんですかね。うまみが濃いですね。そしてこの焦げ目が効いてますね。この香ばしさは新しい。これもうまい。
──肉焼売でもエビ焼売でも、そして蒸しても焼いても、もうどうやってもおいしい。ナイス焼売レシピをありがとうございました。
人長さんのつくるプロの焼売が食べたくなったら
日本橋にある人長さんのお店に行くと、細部にこだわったプロの焼売を堪能できます。
最近は人長さんのレシピを自分でまずつくってみて、その後お店に本物の味を確かめに来るお客さんもいるそうですよ。
撮影:平山訓生
お店情報
リバヨンアタック
住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4 OVOL日本橋ビルB1F
電話番号:03-3548-0840
営業時間:ランチ/月曜日〜土曜日11:30~15:00(14:30 LO)、祝日11:30~14:30(14:00 LO)
ディナー/平日17:30~翌0:30※金曜日のみ翌1:00まで(23:00 FLO/24:00 DLO)、土曜日17:30〜翌0:00(23:00 FLO/23:30 DLO)、祝日17:30〜22:00(21:00 FLO/21:30 DLO)
定休日:日曜日(20名様以上のご予約の場合は、営業させて頂きます)
書いた人:鷲谷憲樹
フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。
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