撮影/馬場磨貴 (撮影協力/エセルの中庭)
『台所のメアリー・ポピンズ』
長きにわたり人気のある作品なので、ご説明するまでもないかもしれませんが、イギリスの児童文学の代表作品『メアリー・ポピンズ』。その台所編とも言うべき本書を、今回はご案内します。物語でメアリー・ポピンズたちが作った料理など、イギリスの伝統料理からデザートまで、計57品のお料理が挿絵と共に紹介されています。
ある1週間、メアリー・ポピンズとバンクス家の子どもたちは留守番をすることになりました。その間、みんなで料理をすることになったのです。そんないつもとは違う、少しだけ特別な時間がはじまります。次から次へと巻き起こる出来事を通して、愉快で個性あふれる登場人物たちの虜(とりこ)になっていきます。フルカラーの挿絵は、制作された当初から多くの時間が経過しているにもかかわらず、いつまでも色あせることなく、今日見ても温かなぬくもりいっぱいです。
作者のP.L.トラヴァースは、オーストラリア生まれ。25歳のときにイギリスに渡り、「メアリー・ポピンズ」シリーズを50年以上かけて書き上げました。そして、挿絵画家のメアリー・シェパードは、あの有名な「くまのプーさん」の挿絵画家であるE.H.シェパードの娘であり、「メアリー・ポピンズ」シリーズのすべての挿絵を描いています。
物語、挿絵、料理と様々な入り口があるところも本書の魅力。物語に登場する料理は、おなじみの「フレンチトースト」から、私自身も初めて知った「ランカシャー・ホットポット」など多種多様です。その材料や調理方法、挿絵からどんな味がするのだろうとイメージするだけで、おなかがぐうっと鳴ってしまいます。
一見難しそうでも比較的シンプルなレシピが多いので、物語に登場する料理がきちんと作れそうなところも大事なポイント。難しすぎて作れなかった……では悲しいですからね。ほかにも、イギリスのレシピらしく、紅茶の淹(い)れ方がきちんと載っているところはさすがです。
本文の少し難しい漢字にはルビも振ってあるので、子どもから大人まで幅広い年齢層の方々に楽しんで頂けます。真っ赤な見た目の本は、とても愛らしく手元に置いておきたくなる欲をくすぐります。そして、誰かを思いながらプレゼントしてみたくもなるのではないでしょうか。
ページをめくるたびに幸せな気持ちがあふれてくるメアリー・ポピンズの世界は、いつどんなときでも、私たちを平等に優しく迎え入れてくれます。
(文・大川愛)
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PROFILE
からの記事と詳細 ( おとぎ話の料理を、さあどうぞ。ページをめくるたび幸せな気持ちに - 朝日新聞社 )
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