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Monday, July 5, 2021

料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン - 朝日新聞デジタル

卓越した技術・味覚・知識を持つ料理界のトップランナーが、行きつけの飲食店を明かす連載「大御所シェフのいつものごはん」。今回は3回目の登場となるフレンチの大御所、田中彰伯シェフの行きつけを紹介します。

訪れたのは東京・新宿の台湾料理店「青葉」。「これだけ使い勝手のよい店はめったにありません」と田中シェフが絶賛する理由とは――。

料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン

PROFILE

田中彰伯

たなか・あきのり 1961年、東京生まれ。15歳でフランス料理の道へ。85年に渡仏、パリの「ラ・ブールドール」でシェフ代行、「アランレイエ」で魚部門シェフをつとめ、南仏の「レ・サントン」ではシェフとして1つ星獲得の快挙を達成。帰国後、代官山「ロジェ・ベルジェ」総料理長を経て、93年に南青山「レ・クリスタリーヌ」を独立開店。現在、渋谷「コンコンブル」、新宿「クレッソニエール」のオーナーシェフ。料理ボランティアなどの地域活動にいそしむ一方で、フランス料理を題材とする画家としても活躍中。

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台湾料理を食べるならここがベスト

ここ数年、タピオカミルクティーなどの台湾スイーツ、魯肉飯(ルーローハン)などの台湾小吃(シャオチー、屋台風の軽食)が人気だが、もともと日本での台湾料理には長い歴史がある。1980年代中盤には、台湾小皿料理の大ブームが起こったこともある。

田中さんにとっては「コースでしか頼めないような高級中国料理と街中華のちょうど真ん中で、本格的な一品料理が庶民的な値段で食べられる貴重な存在」だという。

以前は渋谷センター街近くの「新楽飯店」に通っていたが、ビル建て替えのため15年ほど前に閉店。台湾系華僑の大物だった店主が「今後、台湾料理を食べるならここがベスト」と推薦してくれたのが、新宿歌舞伎町の「青葉」だった。

料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン
新宿歌舞伎町の真ん中、歌舞伎町ビル地下に店を構えて53年

オーナーシェフの李克順さんが1968年の創業時より調理場を、妻の䔥香さんが帳場を守る老舗である。コマ劇場があった頃は楽屋口の向かいという場所柄、芸能人の来客も多く、小松政夫さんは常連のひとりだった。

青葉のメニューに並ぶのは、高級宴会料理から郷土料理、屋台料理、家庭料理まで約200種。「料理のバラエティーが本当に豊富です。インテリアが豪華なので接待にも使えるし、家族と、仲間と、ひとりごはんと、この店だけで全部OK。これだけ使い勝手のよい店はめったにありません」

料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン
昭和レトロ感が楽しめるゴージャスなインテリア

そう語る田中さんが、とりわけ愛してやまない定番が四つある。

まず絶対にはずせないのが、シジミのしょうゆ漬け。国産しょうゆと台湾しょうゆをブレンドしたタレに生のシジミを最低でも2日漬け込む。従来は台湾産の殻が黄色いタイワンシジミを使っていたが、コロナで輸入が止まってしまったため、いまは青森県から大粒のヤマトシジミを取り寄せている。

「タレを吸い込んでぷっくりふくらんだ身が、口のなかでとろりととろける。このシジミで紹興酒をちびちびだらだら飲むのは喜び」と田中さん。かめ出し紹興酒は当たりはずれがあるが、青葉では陶然とする美味に当たることが多いそうだ。

料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン
中身をすすると、まずニンニクが香り、次にシジミのうま味がじわりと広がる
料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン
かめ出し紹興酒4800円。「高級ホテルの中国料理店だと1合8000円はする」と田中さん

ごはんのおかずに、お酒のつまみにもなるのが、干し大根の卵焼き。台湾の代表的な家庭料理で、両面をかりっと焼いた卵とコリコリ、しゃくしゃくした大根の食感が新鮮。日本の卵焼きにはないおいしさだ。

塩漬けしてから干した大根とネギ、コショウを入れて溶きほぐした卵を、油を煙が立つまで熱した鍋に流し入れ、揚げるように焼く。鍋を揺らすだけで、途中でかき混ぜない。オムレツとも違う独特の焼き方だ。

「これだけ高温だから、焼くだけで厚みが出るわけだ」。李さんが作るのを横で見ながら、しきりに感心する田中さんだった。

料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン
たっぷりの油でじっくり焼いて、両面をカリカリに仕上げる
料理人歴60年の技 食通シェフが絶賛する焦がしたビーフン
「干し大根の卵焼き」924円。素朴な滋味に富んでいる
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