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Wednesday, July 28, 2021

永久保存版・はじめての四川料理──趣味にするとこんなにハマる本格中華の世界【四川料理のスゴい人】 - メシ通

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自宅で本格的な中華料理をつくってみたい人のために

ご本人初のレシピ集『四川料理のスゴい人 自宅でつくる本格中華レシピ』(三才ブックス)も発売となり、さまざまなメディアにも出演するなど、ますます絶好調な人長さん。

『メシ通』ではお馴染みの料理人さんですよね。

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今回は本格的な四川料理を自宅で気軽につくるために必要な調理道具などを、あらためて解説してもらうことにしました。

  • 自宅で本格中華をつくりたい人が最初に揃えるべき「調理器具」13選
  • 四川料理を自宅でつくりたい人なら揃えておきたい調味料&スパイス10選
  • 四川料理が複雑な味になった理由
  • 僕が四川料理に魅了された理由

刮目して読んでください。

自宅で本格中華をつくりたい人が最初に揃えるべき「調理器具」13選

四川料理を楽しみたい人に向けて、まずは最初に揃えるべき調理器具を人長セレクトで紹介してもらいました。

①包丁

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:まず包丁からいきますか(笑)。これが無いと始まらないので、言わずもがなで包丁を用意していただくんですけども、さすがに中華包丁は使いづらいので、文化包丁がおすすめ。僕もおうちでは文化包丁を使っていますので、安心してください。

②まな板

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これも、中華の丸いまな板はご家庭ではデカすぎて不向きなので、自宅のキッチンに合ったサイズのものを使っていただければと思います。

③フライパン

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:『メシ通』の連載は「フライパンとカセットコンロだけでもつくれる本格四川料理」ということでずーっと続けているので、フライパンは必須アイテムです。さらに、なるべくならフッ素樹脂加工のものがベターかなと。鉄のフライパンや鉄の中華鍋じゃないほうがいいと思います。
なんでかというと、フッ素樹脂加工のフライパンはいろいろと失敗しにくいですよね。鉄の中華鍋は、普段から料理をやっている人には使い勝手がいいかも知れないですし、僕も鉄の中華鍋のほうが本当は使いやすいんですよ。
でも、普段料理をやってない人たちに向けても、なんかマニアックな四川料理や、わかりやすい中華料理をご紹介したいんです。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:そうなると入門編としてはフッ素樹脂加工してあるものが望ましいんです。
最初の経験で焦げちゃったとか失敗しちゃったとなると、たぶん「もういいや……」となっちゃうので。まず最初に成功した絵を見てもらいたいんですよね。
とくに『メシ通』を読んでくれている人は30代〜40代の男性の方がメインの層だと思っていて。
お店に来てくれた方で「いままで料理をやったことなかったけど、人長さんのレシピを見て麻婆豆腐をつくるようになってから、家で料理をやるようになった」なんておっしゃってくれる人もいて。
そういう意味でも、おすすめしたいのはフッ素樹脂加工のフライパンですね。

④菜箸

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:菜箸はなにかと使いますよね。ひき肉を炒めたり、卵を炒めたり。卵を混ぜたりするときも使いますし。フライパンに入れっぱなしにして焦げたりすることもまあまあありますんで、100均のもので十分です。3セットくらい入ってそこそこちゃんとしたものが売ってますんで。シリコンとかじゃなくていいです。竹の菜箸で大丈夫です。

⑤スパチュラ(木や竹のヘラ)

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:あとはスパチュラ。僕が必ずと言っていいほど使ってる竹のヘラですね。混ぜる、炒めるというときは必ず使いますし。
おうちでは、おたまよりも使う機会が多いと思います。おたまを使うのって、汁ものをすくうときくらいじゃないですか。中華料理でおたまを使うのは、中華鍋の底が湾曲していて丸いから。平たいフライパンを使うなら、スパチュラのほうが確実に使いやすいんです。フライパンで中華おたまを使うと、すっごくやりづらいんですよ(笑)。

⑥アンベラ

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:餃子を握るとか焼売を握るというとき、点心をつくるときはすごくやりやすいんです。スプーンでも代用できますよとは言ってるんですけど、アンベラがあると重宝します。そんなに高くないですし、ネット通販でも合羽橋でも100円、200円で買えちゃうレベルなんで。点心をつくってみようと思った方はぜひ入手してほしいかなと思います。

⑦計量カップ

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:軽量カップは間違いなく必須ですね。料理をはじめるときにはあったほうが便利というか、失敗を防ぐことができます。
僕の記事の場合は細かくレシピ化してて、分量さえ間違えなければそこそこ外れることはないようになっています。100均の計量カップで十分なんで、ぜひ用意していただければと。

⑧電子秤(キッチンスケール)

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:あとこれは、できればでいいんですけど、電子秤みたいなのをご用意していただけるといいなと思ってます。
点心やデザートは、計量がすごく大事で。ちゃんと計量すると失敗しづらい。なので秤はあったほうがいいです。

⑨計量スプーン

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これはマストです。あと、どうしても秤が無い場合は、大さじ小さじが秤の代わりになります。15cc、5cc、あと小小さじの2.5ccと決まってるんで。
粉系だと、お塩が大さじで約15gになったりとか。そういうことがわかってれば計量するときに使えるんで。さじはマストであったほうがいいですね。

⑩蒸し器・蒸籠

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これがあると、料理の幅がかなり広がります。
中華は蒸す料理がけっこうあるんですよ。点心だけじゃなくて、お魚を蒸したりとか、米粉とスパイスをまぶしたお肉を蒸す「米粉牛肉(ミーフンニウルー)」とか。
香港の方では、豆鼓を使ったスペアリブの蒸し料理がすごく有名で。お肉なんだけど、点心って扱いだったりしておもしろいんです。
小皿にスペアリブがあって、甘辛い豆鼓ソースがかかってる。混ぜて蒸すだけでできちゃうんで簡単なんですよ。ちなみに蒸し料理は、計量することが大事。ちゃんと量を計っておけば失敗しづらい。焦げちゃった、とかがなくなるんでね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:もちろん竹の蒸籠じゃなきゃいけないってことはぜんぜんなくて、ステンレスでいいと思うんです。
竹の蒸籠は、取り扱いがけっこうめんどくさいんですよね。濡れた状態で置いておくとカビちゃうし、匂いも出ちゃうんで。逆に、竹の良さってのは、水蒸気がこもりすぎなくていい感じで抜けてくれる。竹の蓋をのせるだけなんで、水がポタポタ落ちたりもしないし。たとえば肉まんとか、ああいう皮系のものもベチョベチョになりにくいんですね。茶碗蒸しなんかも、「す」が入りにくいんです(※)。
竹とステンレス、どっちにもメリット・デメリットはあるんですけど。最初に使うなら、ステンレスのほうが扱いやすいかなと思います。

(※)「す」が入る:蒸し料理などで火加減が強すぎたりすることで表面や内部に細かい穴ができてしまうこと

⑪サラダスピナー

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:僕、これをめっちゃ使うんですよ。お店でも使うし、家にもあるんです。冷蔵庫の中で「シナッ」「クタッ」となってしまったような野菜も、水につけておけばシャキッとなって、それをスピナーで回して水を切れば新鮮な野菜に生まれ変わるじゃないですか。
お野菜は、クタッとした状態から調理しちゃうとクタッとした状態で仕上がっちゃうんです。冷蔵庫の中に3日〜4日入っててクタッとした葉物とかは、一回生き返らせてから調理すると、すごくおいしくなるんです。みずみずしくなる。そこはひと手間なんですけど、ぜひやってほしい。それこそ雲白肉のキュウリとかも、スピナーでガーッて回して表面の水気を切ってあげると、おいしいんですよ。ベチャベチャのキュウリがのってると、味も薄くなっちゃうんで。
サラダスピナー。ぜひ。あったほうがいいかなと思います。

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⑫ボウル

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:ボウルってどの家庭もあるはあると思うんですけど。素材はステンレスが無難ですね。プラスチックのボウルでよくあるのは、ガスコンロの近くに置いてて溶けちゃったってやつで(笑)。
僕は、高校卒業してホテルに就職したんですけど、引っ越したアパートにボウルが無かったんで、どんぶりをボウル代わりにして使ってましたね。

⑬バット

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これはあってもなくてもいいんですけど、ステンレストレー。すなわちバットですね。
たとえば火鍋とかって食材の種類が多いじゃないですか。カットした具材をまとめてバットにのっけておけば、作業スペースもすっきりするし、入れ忘れちゃったとかいうミスもないと思うんですよね。よくあるのが、火鍋を食べ終わってから冷蔵庫を開けたら春菊入ってたとか、鶏団子入ってたとか。
バットにひとまとめにすればそういうことも防げるので。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:13アイテム言いました。これさえ用意しておけば、この本に書いてあるものは全部つくれるということですぞと。

四川料理を自宅でつくりたい人なら揃えておきたい調味料&スパイス10選

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次は、調味料やスパイスの人長セレクトです。

「本格的な四川料理って、見たことない調味料とか珍しいスパイスを買わないといけないんでしょ?」っていう不安がある人もいるとは思いますが、いやいや、だいたいスーパーで買えるんです。

とりあえず四川料理を楽しむことができるスターターセットを、重要度が高い順にご紹介。

①豆板醤

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▲左が普通の赤い豆板醤。右が熟成の進んだピーシェン豆板醤

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:第一に必要なのが豆板醤ですよね。これは、四川料理をつくろうとしている人は絶対に用意してほしいし、これがなきゃ麻婆豆腐とは言えねえぜという感じでございます。
僕の家の冷蔵庫にはマストで入ってるんですけど、中華だけじゃなくて、野菜炒めにちょい足ししたりとか、ミートソースに隠し味で入れたりします。ちょっとピリッとするんです。僕は、僕の場合はですよ、ミートソースにガッツリ入れちゃうんで、もはや隠しきれない味になっちゃうんです。
「これ、もしかして麻婆パスタじゃねえの?」ってなっちゃう。それでも「うまいからいいか」って食べちゃうんですけど。ちゃんと「隠し味」として入れていただくと、料理の幅がグッと広がるし、味変もできて楽しいかと思います。

【豆板醤の種類】

普通の豆板醤と、熟成の進んだ「ピーシェン豆板醤」でも味が違いますし、そこはみなさんのお好みでいいと思います。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:まずは、基本の赤い豆板醤から。ピーシェン豆板醤ってそんなに辛くないので、辛さを求めるんであれば、赤くて若い豆板醤がいいですね。
若い豆板醤とピーシェン豆板醤の使い分けのイメージは、アレです。おうちで赤出汁の味噌汁を飲みたいときもあれば、お雑煮は白みそだよってところもあるじゃないですか。そんな雰囲気ですね。
ウチ、親が関西なんで、正月のお雑煮は必ず白みそだったんです。それがすっごいイヤで(笑)。「うわー、甘いなー」って。僕は、お出汁の効いたお醤油のお雑煮が食べたかったんですよ。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:いろんなお店によって、使っている豆板醤って違うんです。その人のこだわりの豆板醤を使ったりとか、手づくりの方もいらっしゃるんですよ。いまお店で使っている豆板醤も、いろんなものを食べ比べて、それで選んだものなので。自分好みの豆板醤を見つけてほしいなと思います。
ちなみに僕は、家では某社の豆板醤を使っています。スーパーで売ってる市販のやつです。あれは辛みがちゃんとあるので。ていうか辛すぎちゃうから、そこにピーシェン豆板醤を混ぜるときもあります。

②唐辛子

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:四川省に行くとたくさんの種類の唐辛子があって、料理に合わせて使い分けるんですよ。でも日本ではそんなにいろいろな種類は手に入らないんですよね。日本ではいわゆる鷹の爪や、あとはチョーテンラージャオ。朝天辣椒と書きます。これは中華街とか、ネットで買えると思うんですけど。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:朝天辣椒って唐辛子は、小さくて丸っこくて、赤いパプリカみたいなカタチのものです。味はそんなに辛すぎずに、甘い風味があって。こういう香ばしい香りのことをフーシャン(馥香)っていうんですけど、四川料理には欠かせない唐辛子のひとつですね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:もうひとつはニケイジョウ。二荊条と書きます。僕のレシピ本でパオラージャオ(泡辣椒)って調味料を使ったんですけど。あれに使ってる細長い唐辛子です。肉厚なんです。豆板醤をつくったり、パオラージャオ(泡辣椒)をつくったりするときに使います。プロ用なので、ちょっと手に入れにくいかもしれませんけど。
それでも昔に比べたら今は日本でも手に入りやすくなりましたんで、いろんなものを使ってみると楽しいと思いますね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:あと唐辛子の粉末というか、一味唐辛子は、ウチのお店の場合はさっきの朝天辣椒をよく使いますね。それと鷹の爪の一味唐辛子を両方使います。朝天辣椒のほうが、よりフーシャン(馥香)の香りが効くので。
ラー油も、鷹の爪と朝天辣椒の二種類のラー油をつくってます。麻婆豆腐用のラー油は朝天辣椒の粉を使ってます。香りがよくて、それでいてあまり辛くないんですよ。

③花椒(ホアジャオ)

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これも四川料理には絶対に欠かせない調味料のひとつです。僕もこの痺れに魅了されたひとりです。僕の料理人人生を左右した調味料のひとつなんです。
これと出会ってなかったら、たぶん四川料理をやってなかったと思います。この痺れに驚き、感動し、もっと知りたいと思ったから四川料理の門を叩いたんですね。
高校生のときに、調理実習で初めて花椒を口にしたんですよ。そのときの衝撃たるや、今でも忘れられないくらいですね。食いもんじゃねえと思いました(笑)。
なんじゃこれー! って思ったんですけど、何日かしてから「あれ、すごかったな……」って脳裏に焼き付いているんですよ。
あの痺れが。最初の衝撃が。それで、また食べてみたいと思って、先生に花椒を持ってきてもらって、味見してみたら、やっぱりすごいなって。それで、中華料理や四川料理をもっと勉強してみたくなったんです。僕にとってはすごく大事な調味料のひとつです。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:お店に来てくださるお客様がよく言うんですけど、レシピを見て家でつくってみても、お店で食べたときの味にならないと。こんなに痺れる花椒は手に入らないからって言うんです。でもそれって、スーパーとかで売られている市販のパウダーの花椒だからかもしれません。あれって、僕も使ってみたんですけど、たぶん挽いてからずいぶん時間が経ってるんで、痺れも香りも抜けちゃって、苦味があるジャリジャリの粉みたいになっていることが多くて。あれはちょっと残念だなと。
あと、できればホールの花椒を買ってほしいですね。粒胡椒をゴリゴリやるみたいな感じで、ペッパーミルで挽いてもぜんぜん大丈夫です。ただ、それだとお店で麻婆豆腐に使うレベルの細かさにはならないんですよ。
よりこだわってみたかったら、ミルや乳鉢を使ってもらったほうが、本格的な花椒の痺れを味わえます。また、花椒の粒ってかなり細かくしないとちょっと口に残るので、歯につまったりして、気になる方もいるでしょうし。

④豆鼓(トウチ)

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これは豆鼓醤じゃなくて、豆鼓の粒、ホールがおすすめですね。
大豆を発酵させた調味料で、これを入れると料理のレベルがグッと上がるというか、コクが増すのです。
発酵食品だから、料理のうま味を引き出してくれてると思ってて。麻婆豆腐に使うのもよし。むしろ、豆鼓の丸いのを刻んで豚肉や牛肉とガーッと炒めるだけでも十分うまいと思うんですよね。
こんどそういうレシピも出せたらいいなと思ってます。ソースにも使えますよ。麻辣ソースのアレンジとか。よだれ鶏の甜醤油の代わりになる、簡単なソースのレシピもご紹介したいですね。

⑤甜麺醤

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:これも、いろんな料理をつくるときに使います。僕のレシピでは数多く登場してくる肉味噌も甜麺醤がないとできないですからね。
いま少量の瓶詰めが売ってるんで、肉味噌を大量に仕込むなら、あれをちょうどひとつ使い切るくらいになると思うんです。
そんなにすぐに悪くなるものでもないんで、冷蔵庫に常備していいと思いますよ。

⑥ニンニク ⑦ショウガ

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:ニンニクは中華料理とは切っても切れない食材のひとつですよね。
僕もけっこういろんな料理に使ってると思います。やっぱね、豆板醤を使うような、辛い料理と相性がいいんですよ。
それと、ショウガもニンニクに負けないくらい使いますね。
臭み消しとして、炒めものもそうですけど、スープにもよく使います。ニンニクもショウガも、チューブでも十分なんだけど、やっぱりね、フレッシュなものをすりおろして使うほうがおいしいんですよね。

⑧ネギ

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:ネギもよく使う食材です。パッとふりかけたりもするし、炒めたりもするし。特に辣子鶏には絶対にネギがないとダメです(笑)。僕の中では辣子鶏は「ネギを食べる料理」なので!

⑨八角、シナモンなどのスパイス・ハーブ類

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▲八角

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:ここらへんからは優先度が同じになってくるんですけど。八角、シナモン。これは、あるといいよねっていう感じですね。
ラー油をつくるときに八角やシナモンを使うと、より香りが引き立つんです。『メシ通』で紹介したラー油のレシピには入れていないんですけど、ホントはお店によってはいろいろ入れるんですよ。

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▲シナモン

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:中華料理って油をすごくうまく使う料理だと思っていて。ラー油も花椒オイルもそうですけど、油に香りを移して最後の仕上げに入れたりとか、前菜のソースに香りを移したオイルを入れたりとか。そういうのがすごくうまいんですよ。

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▲陳皮

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:八角やシナモンを水につけて抽出するとかじゃなくて、オイルで抽出して料理の仕上げに使う。中国では、そういう感じで香辛料も発達したり流通したりしていったのかなと思って。八角もシナモンもスーパーで売ってるんで。もし余裕があれば、そこまで用意していただけるとおもしろいんじゃないかなと思います。
ラー油にいろんなものを入れる話ですけど、お店や人によってホントにいろいろなんです。草果(ソウカ)っていう香辛料を入れるところもあるし。こういうのもお店の特徴になるんですね。

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▲草果(ソウカ)

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:みなさんも、市販のものでもいいし、僕のレシピのラー油でもいいし、ほかのものでもなんでもいいんで、好きなラー油を使って楽しんでほしいですね。
この前いらっしゃったお客さんなんか「人長さんのラー油のレシピでつくってみたら、今までのラー油は何だったんだ! ってなった」と言われて。
びっくりされたんでしょうね。
で、「家でつくるのもいいんだけど、やっぱりめんどくさいので買いにきました」って(笑)。ありがとうございます、ですよね。ウチで売ってるのは、あのレシピものじゃなくて、シナモンも八角も花椒も陳皮も入ってるので、より香りが高いんすよ。

⑩鶏ガラスープの素

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:あと、市販の「中華ダシ」「鶏ガラスープの素」の違いについて、ちょっといいですか。
「中華ダシ」は、もちろん鶏のエキスが入ってるんですけど、それ以外にも豚のエキスや塩分とかもけっこう入ってるし、いろんなほかの調味料も入ってるので、味が決まりやすい。たとえば、かきたまスープをつくるときにこれを入れちゃえば、一発で味が決まるんです。それが中華ダシ。
じゃあ「鶏ガラスープの素」はなんなのかというと。鶏のエキスをメインに抽出したものに、ちょいちょい調味料を加えて味を調えて、これをギューッと凝縮して粉状にしたものが鶏ガラスープの素。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:この2つはかなり違うものなので、同じ感じで使うことはおすすめできないんです。
なんでかというと、まず塩分量が違うんです。
僕のレシピをつくる場合であれば、鶏ガラスープの素がいいと思います。ていうのは、僕がつくる場合って、お塩とかお醤油とかが入るじゃないですか。そのときに中華ダシを入れちゃうと「あれ、味濃いぞ」となるわけですよ。「しょっぺ!」となっちゃうわけですよ。
すると「なんだよ、レシピ通りにやったのに味が違うじゃないか」ってことになるんで、そうならないために、鶏ガラスープの素を使ってもらうと助かります。
中華ダシを使っちゃうと、いい意味では味は決まるけど、悪い意味でいうとその味にしかならない。言い方は悪いけど、食べたことのある味になっちゃうんですね。「いつものアレ」になっちゃう。
逆に、いつものアレを食べて「あーこれこれ」っていうのがいい場合もあるんで一概には言えないんですけどね。疲れて家に帰ったときに、中華ダシを一発入れて「あーこれこれ」って食べて寝る、みたいな場合には最適なんです。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:でもレシピ本とかを見て「これつくってみよう」って思ったときは、レシピの再現性を上げたいじゃないですか。レシピに「鶏ガラスープの素」と書かれてるのに、中華ダシを使っちゃうと、塩分が多めでしょっぱくなっちゃう。
なんなら中国の安いお店なんか、ダシを取ったスープなんてそもそも使わなわないってお店も多いですからね。大量に沸かしてあるお湯を、おたまですくって使うんですよ。
でなければ化学調味料。例の「魔法の粉」で味を決めちゃうんですね。中国の庶民的なお店なんて、麻婆豆腐一皿12元とか……、まあ200円ちょいくらいだったりするんで、そりゃいちいちダシなんかとってられないですよね。
まあリーズナブルなお店ならではのおいしさもあるんです。もちろん高級ホテルのレストランはちゃんとダシをとってますけどね。で、庶民的なお店も高級レストランも、どっちも値段相応でおいしいんですよね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:以上が揃えておきたい調味料やスパイスです。この中で特徴的な食材って5つだけですからね。豆板醤、花椒、甜麺醤、豆鼓、唐辛子。
あとは料理する人であればだいたい台所にあるものじゃないですか。
こうして挙げてみると、必須ってものは意外と少ないので、四川料理って始めやすいんじゃないかと思ってきましたよ。
「あれも用意しなきゃいけないんでしょ? これが無いとダメなんでしょ? 聞いたことない調味料が必要なんでしょ?」って思いがちなんですけど、実は、これくらいあれば、本格的な四川料理がいろいろつくれちゃうんです。

四川料理が複雑な味になった理由

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:四川料理の特徴は、いろんな調味料を使うことでしょうか。
先ほどご紹介したおすすめ調味料の他にも、チューニャンがあったり、オイスターソースもそうですし、パオラージャオ(泡辣椒)とか、いろんなのがあるわけですよ。それがあるからこそ、四川料理ってすごく複雑な味になるんです。
四川省って海がないし、昔は貧しい土地柄だったんで。料理人たちがなんとかおいしいものをつくろうとあれこれ考えてきたものが今のカタチになってると思ってて。工夫されてるというんですかね。それこそ「あまり質の良くない牛肉と、あまり質の良くない豆腐しかない」ってときに考え出された麻婆豆腐とかですね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:あと、特に発酵調味料が多いんですよね。保存が効くというのもその理由かもしれません。昔は冷蔵庫もありませんからね。これは四川省だけじゃないですけど、乾物がすごく多いですよね。乾物にするとアミノ酸が増えておいしくなるというのもありますんで。その複雑さというのが特徴でもあり、魅力的だと思うんですよ。
そして麻辣。
この特徴は、ほかの中華料理には無い部分ですよね。
麻のシビレと、辣の辛さ。これは四川料理独自の発展の仕方だと思うし、いまこうして中国全土に広がっているというのは、四川省だけではなく中国人みんなが魅了されてるという確たる証拠だと思うんです。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:日本も昔は「中華料理と言えば広東料理」だった時期もあったけど、最近は日本人も四川料理の虜になってきて。
いまも四川料理のお店も増えて、僕の麻婆豆腐のレシピも興味を持って見てもらえて、麻辣の味が多くの人々に好まれている。これこそが魅力、特徴だと思ってます。
辛いだけじゃなくて、花椒のシビレも好まれているんですよね。辛さとシビレのふたつがあって、おいしいねってなるんであって。
花椒って、シビレすぎると「呼吸が止まりそうになる」んですよ(笑)。中国の市場に買い付けに行くと、その場で花椒を味見できるんですけど、いい花椒のときって「ウッ!」てなるんですよ。すんげーシビレるーって、なるんです。それが麻痺するというか、そんな感覚に近いんじゃないですかね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:たまに、お店のお客さんに「激辛でつくってくれ」って言われることがあるんです。でも、料理人としてただ辛いだけのものはつくりたくなくて、おいしいと感じられる極限の辛さまではやりますけど、それ以上は、やれないんです。僕の中でリミッターがあるんでしょうね。
「唐辛子の辛みをこれ以上増やすとおいしくなくなる」ってところを越えられないので。それでお客さんに「辛くなかったよ」って言われても、すみませんとしか言えないんですよ。
辛みって痛覚なんで、味覚じゃないんで。その痛覚を麻痺させるのが花椒のシビレなんでしょうね。そこを上手に合わせることで、四川省の料理人たちは新しいところが見えて、麻辣が生まれたんじゃないですか。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:僕も、なにか新しい料理をつくれないかなと思いながら日々調理してるんです。だから、味わったことない調味料や知らない食材が入ってくるとワクワクするんすよ。
その感覚が、当時の四川省の料理人の中にあったんじゃないですかね。これは400年前でも、今でも、その感覚は同じだと思うんですよ。そんな感じで麻辣の味が生まれたんじゃないですかね。

僕が四川料理に魅了された理由

f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:料理人になりたくて、調理科のある高校に入ったんです。調理実習の講師の先生が、自分のお店から花椒を持ってきて、その花椒の実をそのままかじってみろっていうんですよ。ニヤニヤしながら見てましたね(笑)。たぶんそれは毎年恒例で、学生にそうやってかじらせて驚かせてたんだと思うんですけど。僕は、それを食べたときに衝撃が走ったんですよ。
その調理実習の先生が、のちに僕の師匠になるんですけど(笑)。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:でも最初に四川料理を食べたときは、申し訳ないけど、おいしいとは思えなかったです。おいしいよりも「なんだっ!?」という驚きと、「ヤベえ!」って感覚がまずあったんで。酸辣湯麺も、最初に食べたときは「酸っぺえし辛いし、なんだこれ?」とびっくりしたんですけど。でも食べていくにつれて虜になっていくんですよね。
実習で教わった四川料理が辛い料理だったときには家でまたつくって家族に食べさせたりして、っていう練習をしてましたね。それで、高校生の頃にはもう四川の料理人になろうと思ってたんで。高校3年生のときかな。僕の師匠に「働かせてください」って言ってたんです。
ちょうどそのホテルのレストランがリニューアルするタイミングで「人が足りないからこっちくる?」って言われて、お願いします! と。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:高校で花椒をかじるまでは、ずっと洋食の料理人をやろうと思ってました。あと甘いものが好きなのでパティシエをやろうと思ってました。いまでもよくデザートはつくりますよ。ケーキとか。つくるの好きなんで。
料理は小学校のころからやってたんで。好きだったんです。
親が共働きで、家でメシをつくるとなると、小学生の僕が担当だったんですね。兄弟は部活で帰りが遅かったんで。家にいるのが僕だけだった。で、親も兄弟も、僕がやってくれるもんだから「おいしいおいしい!」っつって持ち上げちゃってね(笑)。
それで、気づけば小さいころから料理人になろうって決めてましたね。

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f:id:nwashy:20210705220638p:plain人長:当時は、やはり子供の目線なので「料理人=コックさん」というイメージだったんです。そのころは、野菜炒めとか、オムライスとか、お肉を炒めて父親のウイスキーをかけてブワーってフランベしたりとか。
意味もなくフランベしてたんで、今思うと完全にあれは火遊びの延長でしたね(笑)。換気扇のところまで炎が上がって、いま思えばかなり危なかったですね。豚の肩ロースとか買ってきて、塩コショウして、ニンニク炒めて、両面焼いて、最後にフランベする。フランベすればステーキはうまくなると思ってたんですね。
テレビで有名シェフが対決する番組ありましたよね。あれ、みんなすぐフランベするじゃないですか(笑)。そりゃマネしますよ、小学生は。それすりゃうまくなると思ってんだから。ああ、だからあのころは洋食屋をやろうと思ってたのかな。
中華は逆につくったことなかったですから。あ、でもチャーハンは有名ブランドのインスタントのやつでめっちゃつくってました。あれはうまいですよ!

さてさて次回は、人長さんの「四川料理のスゴい人」シリーズを振り返り、お役立ちなアレンジ方法や疑問点の解決をすることで、これからの展開を探っていく流れとなります。

ラー油はもっと少なくつくれないのか。

餃子の余ったアンコをどうするのか。

エビチリのソースをアレにかけるとどうなるのか。

待て、次回! 乞うご期待!

▼人長さん初の著書『四川料理のスゴい人 自宅でつくる本格中華レシピ』(三才ブックス)

www.sansaibooks.co.jp

撮影:平山訓生

お店情報

リバヨンアタック

住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4 OVOL日本橋ビルB1F
電話番号:03-3548-0840
営業時間:ランチ/月曜日〜土曜日11:30~15:00(14:30 LO)、祝日11:30~14:30(14:00 LO)
ディナー/平日17:30~翌0:30※金曜日のみ翌1:00まで(23:00 FLO/24:00 DLO)、土曜日17:30〜翌0:00(23:00 FLO/23:30 DLO)、祝日17:30〜22:00(21:00 FLO/21:30 DLO)
定休日:日曜日(20名様以上のご予約の場合は、営業させて頂きます)

www.hotpepper.jp

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。

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