料理の決め手は味付けだろう。しょっぱくなるか、甘くなるか。不得手の人には調味料の加減が最も難しいポイントかもしれない。そんな時、計量スプーンが重宝する▼栄養学者で女子栄養大を創立した香川綾が考案したという。一九四八（昭和二十三）年ごろは、料理する際にグラムや匁［もんめ］などが混在して使われていた。香川は単位を合わせる必要があると感じ、誰もが同じ基準で、間違えずに調理できるよう計量スプーンを試作した。調味料を定量にでき、塩分の取り過ぎも防げると考えたようだ（香川綾著「一皿に生命こめて」）▼福島市は減塩ならぬ「適しお」を市民に勧めている。カレー粉やレモン、酢で香りを付けるレシピをホームページで公開している。塩分を減らしてもおいしさを保つアイデアだろう。今月からは取り組みに協力するサポーターの募集を始めた。地域全体で機運を盛り上げる▼昔も今も人々の健康を願う気持ちが知恵や工夫を生んできた。その成果をどう生かすか。香川は「一人一人が実践するかどうかにかかっている」と訴えた。まずは、計量スプーンを片手に適しお料理に挑戦してみる。体に優しい新たな味に出合えるはずだ。
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