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Saturday, June 11, 2022

<社説>りゅうぐうの砂 生命の起源探求に期待:北海道新聞 どうしん電子版 - 北海道新聞

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で回収した砂などの試料を巡り、画期的な発見が相次いでいる。

 生物を構成するタンパク質の材料となるアミノ酸が23種も見つかった。地球外の天体で直接採取した試料からアミノ酸が検出されたのは世界初となる。

 さらに北大などの研究チームの解析により、試料の元素の構成は太陽系が誕生した46億年前の状態を残していることも判明した。

 こうした研究は地球上の生命の起源を探ったり、太陽系の歴史を解明したりする上で貴重な手がかりとなる。日本の宇宙探査が人類に大きな成果をもたらした。

 りゅうぐうの試料は国内外の研究チームによる分析が継続中だ。数々の謎を解く知見が今後も得られることを待ちたい。

 アミノ酸は生命維持に不可欠な物質である。だが地球上で作られたのか、地球外からもたらされたのかは明確になっていない。隕石(いんせき)からの検出例はあるものの、地球上で付着した可能性が残る。

 今回の発見は、生命の源であるアミノ酸の宇宙由来説を補強することになる。地球外生命が存在する可能性にもつながろう。

 北大などによる研究は試料が水を含むことも明らかにした。地球上に海が形成されたプロセスは謎が多く、これを解く手がかりになると期待される。

 はやぶさ2は52億キロの距離を約6年かけて行き来し、2020年にりゅうぐうの試料5・4グラムを納めたカプセルを地球まで届けた。小惑星から試料を持ち帰ったのは世界初の快挙だった。

 多くのトラブルを乗り越えて任務を全うした初代「はやぶさ」とともに、小惑星探査が日本のお家芸であることを証明した。

 日本は高度な安全性が要求される有人探査よりも費用負担の軽い無人探査を選び、競合国が比較的少ない小惑星に狙いを定めてきた。それが功を奏したと言えよう。

 今回の試料分析は、幅広い分野で最前線に立つ世界各地の科学者が携わっている。国境を越えた連携で生命や宇宙の謎に迫り、次世代の関心を高めたい。

 日本の宇宙計画の幅を広げる好機だ。計画中の火星の衛星探査や米国主導の月面探査への参加に、技術や手法の蓄積を生かせよう。

 宇宙探査は巨額予算と長い歳月を要する。国は短期的な成果を追うだけでなく、長期的視点を持って研究を下支えするべきだ。

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