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Thursday, February 20, 2020

最終赤字から再生かけるクックパッド。脱レシピで狙う「サステナブルな料理の会社」 - BUSINESS INSIDER JAPAN

hukuzaki

2020年1月に執行役に抜擢された、福崎康平氏(29)。脱レシピサービスから目指す先は。

撮影:今村拓馬

料理レシピ検索大手のクックパッドは、2019年12月期の連結決算が2009年の上場以来、初の最終赤字となり、創業から23年にして大きな変化の時を迎えている。

本業のレシピサービス事業は広告収入、課金モデル共に伸び悩んでおり、投資フェーズにある海外事業も、真価が問われるのはここからだ。

そんなクックパッドが「次の柱に」と打ち立てるのが、生鮮食品のECサービス「クックパッドマート」。物流コストを抑えた「置き配」スタイルが特徴で、受け取りのための生鮮宅配ボックスをドラッグストアやコインランドリーなどに展開してきたが、2月20日には東京メトロ構内にも新たに設置することを明らかにした。

2017年からの10年を「投資フェーズ」と位置づけているクックパッドは、この期間に「レシピの会社から料理の会社へシフトする」と明言している。クックパッドマート事業の責任者で、2020年1月に執行役に抜擢された福崎康平氏(29)に、その真意とビジョンを聞いた。

クックパッド初の20代執行役は料理中だった

料理する姿

毎日午後6時半には帰宅して、家族のために料理する役員の福崎氏。

撮影:今村 拓馬

部屋に入ると、新鮮な葉物野菜を刻む香りにふっと包み込まれる。

恵比寿ガーデンプレイスタワーのクックパッドのオフィス。インタビューに用意された一室には広いオープンキッチンがあり、クックパッドマートで扱う産地直送の野菜をカウンターに広げ、すでに福崎氏が料理を始めていた。

クックパッドの「これから」について聞くこの日のインタビューは、注力事業のクックパッドマートの食材を使ったランチを、福崎氏自らが記者とフォトグラファーに振る舞う——というスタイルで行われることになっていた。

「レシピ検索の会社というところを脱して、世界でどこよりも一番、料理に寄り添う会社になりたい」

福崎氏は、手際よくネギを刻んだり鶏肉をあぶったりしながら「脱レシピ検索」で見据える未来について語り出した。

毎日午後6時半に帰って妻に食事を作る

「毎日仕事帰りに買い物をして、家族に食事を作るのは本当に大変なこと。もっと料理を自由にしたい。共働き家庭はじめ、日本の料理や買い物のペイン(痛み・問題)を解決したいのです」

そう話す福崎氏自身が、育児休業中の妻と4カ月の第一子のために毎晩、午後6時半にはオフィスを出る。自宅最寄りのクックパッドマートの生鮮宅配ボックスが置かれた自宅近くのTSUTAYAに立ち寄り、アプリで注文していた食材を回収して帰宅し、夕食を作っている。

インタビュー当日に振る舞われたのは、毎日食べても飽きのこないようなお惣菜メニュー。雑談に応じながら、並行して複数の品を作る手さばきは、確かに日々、料理する人のものだ。この日のメニューは以下のとおり。

  • 焼き鳥丼
  • 鶏ガラとネギのスープ
  • かつお菜とツナ和え
  • 菜の花の胡麻和え
  • 生レモンジュース

箸をつけると、旬の野菜の新鮮さ、滋味深いスープ、精米したてというお米の旨味で、肩のこらないホッとするようなお膳になっている。

クックパッドマートが担う料理サービス

ランチ

インタビュー当日、福崎氏が取材に答えながら手早く整えた御膳。新鮮な焼き鳥丼に野菜の和え物は、どこか春を感じさせた。

撮影:今村 拓馬

「将来的にはレシピサービス事業と同等、あるいはそれ以上の中核事業に成長させる」

現在約30人のチームを率いる、事業責任者の福崎氏は、生鮮食品ECのクックパッドマート事業をそう見据えている。レシピ検索大手として、日本でのインターネット草創期からそのブランドを20年以上かけて作り上げて来たクックパッド。そんな「レシピの会社」が脱レシピサービスするとしたら、どこへ向かうのか。福崎氏は「4つの柱」を挙げる。

  1. グローバルに展開するレシピコミュニティの磨き上げ
  2. スキルがなくても毎日の料理を楽しくできるサービス
  3. 買い物体験をもっと自由に
  4. 農業の自律・多様化

4つの柱について、1つずつ見ていこう。

1.グローバルに展開するレシピコミュニティの磨き上げ

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出典:クックパッド決算資料

従来のレシピコミュニティはグローバル化が必須だ。現在国内のユーザー数5251万人に対し、海外ユーザー数は世界74カ国4185万人。国内の有料会員は200万人前後で伸び悩んでいる。今後の成長のカギを握るであろう海外での有料化も、すでに試行を始めている。

一方、福崎氏が携わる生鮮ECのクックパッドマートは次の2〜4を担うプラットフォームだ。

2.スキルがなくても毎日の料理を楽しくできるサービス

Vagetable

クックパッドマートの強みは産地直送の新鮮な食材の魅力に象徴される。

例えばこの日のランチで供された野菜は「調布のやさい畑」お任せ野菜Bセット(1000円)。アプリで朝に注文すれば、夕方の帰宅時には、最寄りのクックパッドマートのクックパッド専用ボックス設置店舗で、調布産の朝採れ野菜8〜10点(小松菜、春菊、チンゲンサイ、パクチーなど旬のもの)を受け取れる。

新鮮な素材は手間をかけなくても、さっと塩とオリーブオイルを振るだけでも美味しい。マヨネーズだっていい。「スキルがなくても毎日の料理を楽しく」のニーズに応えるという。

3.買い物体験をもっと自由に

IPhone

クックパッドマートでは一品から、朝注文したものがその日のうちに受け取れる、きめ細かなニーズが特徴。

そもそも、仕事帰りに小さな子どもを連れてスーパーに寄るのは荷物も多く時間もかかり、至難の技。まとめ買いには労力もかかるし「その日食べたいものを購入する」自由度はない。

この点、スマホで注文できる置き配式のクックパッドマートは「買い物体験を自由に」を実現できている。

4.農業の自律・多様化に

青々とした旬の野菜が籠盛りで1000円とは驚きだが、福崎氏はいう。

「生産者の顔が見える生鮮食品をダイレクトに消費者に届けるとの思いで、農家から直接仕入れています。スマホで購入し受け取りまで中継ぎ業者を介さないことから、時間もコストも抑えることができている

この結果、198円の小松菜がスーパーで売られると生産者取り分は20〜30%なのが「クックパッドマートでは3分の2が確保できる」と福崎氏は説明する。「今、消費者に売れる野菜が何なのかも分かるようになるし、生産者の自律につながる」。これが「農業の自律・多様化」だ。

宿命のようなクックパッドとの出合い

福崎さん

福崎氏の半生は料理との結びつきが強い。クックパッドとの出合いもその1つだ。

「食の領域で個人が輝くサービスを作りたいという思いが、これまでの人生を通してありました」

クックパッド最年少執行役になった福崎氏が、クックパッドに加わったのは2年前。コーチと生徒のマッチングサービス「サイタ」社長から、同社をクックパッドが買収・完全吸収したことがきっかけだ。

しかし、料理や食に対する福崎氏の理念は、クックパッド以前にさかのぼる。福崎氏は、慶應義塾大学総合政策部(SFC)在籍中、東日本大震災で被災者と受け入れ先を結ぶCtoCサービスを立ち上げて反響を呼ぶが、その後、1年間に35カ国を放浪。世界各地で自らがシェフとなり料理を振る舞う旅を続けた。

今もなお、平日は家族に、週末には友人たちを呼んで、日々料理を作り続けている。

「結果的に、料理の領域のプラットフォームであるクックパッドに来たことには縁を感じています。工業化の恩恵を否定するつもりはないのですが、生産者から料理をする人、消費者までをつなぐサステナブルな仕組みでなければ、これからの時代に生き残ることはできない

初の赤字決算は通過地点というフェーズ

トラック輸送

物流コストをいかに適切な範囲に収めるかが、クックパッドが掲げるサステナブルなプラットフォーム実現の1つのカギ。

Getty Images

とはいえ、足元の環境はたやすい状況ではない。2019年12月期のクックパッド通期決算は、9億6800万円の最終赤字。前年の黒字決算(最終利益4億700万円)から、上場以来初の赤字転落という厳しいものだった。

さらに、現在の売上高117億5300万円(2019年12月期)はレシピの有料会員と広告売り上げが約9割を占め、クックパッドマートが含まれるその他の売り上げは1割程度。脱レシピから料理の会社へのモデルチェンジは、今後の成長力にかかっている。

クックパッドといえば2015年、当時の経営者だった龝田誉輝氏と、創業者の佐野陽光氏の経営方針を巡る対立が表面化し、事業領域を「料理」にこだわる佐野氏が経営権を獲得。龝田氏が代表執行役を退任するという交代劇が話題となった。福崎氏はまさに、その佐野氏の流れを汲んだ経営陣と言える。

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出典:クックパッド

福崎氏はこうした現状を踏まえながら、こう前を見据える。

「食品流通のビジネスの立ち上がりにはある程度の時間が必要。毎年の利益も大事だが、今は投資フェーズとして価値ある料理のプラットフォームの構築に力を入れていきたい」

さらに生鮮食品ECのクックパッドマートの普及には、宅配ボックスの設置箇所拡大は不可避。それには物流コストをいかに適切な範囲に収めるかが、クックパッドが掲げるサステナブルなプラットフォーム実現の一つのカギでもある。

この点、「食材の生産者からの共同集荷、消費者に届けるのも共同配送という負担なく参加できる仕組みを作り、グループごとのルート配送で無駄なく美しいロジスティックを作っている」(クックパッド)と自信を見せる。

料理はもっと自由になれる

soup

「料理はもっとも変化するクリエイティブな領域」と福崎氏は語る。

日本の食の市場は20兆円と言われながらも、EC普及率はわずか1%程度。欧米の5〜10%と比較すれば潜在的な成長余力は相当あると見られている。

「これから毎日の料理そのものの向き合い方も変わっていくと思います。かつて着るものは家で作っていましたが、購入するものになって、かえってファッションの自由度は上がった。料理もレシピも、もっと変化するもっともクリエイティブな領域だと思っています。新たな料理のバリューチェーン(価値連鎖)を作り出していきます」(福崎氏)

レシピ大手として確立してきたブランドを発射台に、どこまで飛躍できるのか。次世代クックパッドの真価が問われている。

(文・滝川麻衣子)

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February 21, 2020 at 03:00AM
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