『ビッグデータ探偵団』
ビッグデータという言葉はすっかり定着したものの、それがどう役に立つのかをイメージできずにいる人は多いことだろう。検索サービスなどでおなじみのヤフーは多彩なウェブサービスを通じて、社会と生活に関わる膨大なデータを蓄積している。そのデータを活用するための社内の取り組みから、ビッグデータの有用性と面白さを浮き彫りにするのが本書だ。
分析で明らかになった世の中の実相の断片もさることながら、分析プロセスも興味を引く。銘記したいのは「データはただの素材。真価を引き出すにはユニークな切り口を発想し、実現する技術を持つ人間が必要」との指摘。すべてのビジネスがデジタルデータと密接に関わる今後、膨大なデータを「料理する」スキルは時代を生き抜く大きな武器になるはず。
要点1 移り変わるニーズを時系列で検証できる
検索ワードから「新社会人」「出産直後のママ」といったグループを特定し、その検索傾向をすべての検索データと比較すれば、グループに特徴的な興味・関心・悩みなどが分かる。検索日時を加味すれば、「このグループにはこの時期にこういうニーズが生じる」といった予測も可能だ。「新社会人」の場合、「初任給 プレゼント」のような当初の初々しい検索ワードが、やがて「足の臭いを取る方法」「休日の過ごし方」「仕事辞めたい」などに変わってくる。「出産直後のママ」の「ほ乳瓶」を巡る悩みのようなピンポイントのテーマも、同時に検索するワードの分析で、きめ細かくフォローできる。この種のデータは各業界のマーケティングに即役立つ。
要点2 曖昧な気分や感情を視覚化
SNSに投稿された言葉を即座に検索できる「Yahoo!リアルタイム検索」のデータを使えば、曖昧な気分や感情、感覚も分かりやすく可視化できる。ツイッターの投稿などに含まれる特徴的な言葉を抽出・解析したところ、人々の24時間の感情の特徴が分かった。朝6~7時は「明るい」「眠い」「健康的」「頑張ろう」といった比較的ポジティブなワードが目立つが、午前2~4時の気分ワード1位はそれぞれ「怖い」「まずい」「死ね」。夜がふけるほど、人の気持ちはネガティブになっていく。
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