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料理は平成以降、時短、中食ブームへ
新型コロナウイルスの流行で、家族そろって自宅で食べる機会が増えた人は多いだろう。外出が自粛されて外食が難しくなり、子どもたちの学校が休校になり、仕事がリモートワークになる。ふだんより料理する頻度も量も増え、献立に悩む人は多いのではないだろうか?
家庭料理の世界では、平成以降料理の簡略化傾向は高まってきた。レシピは簡単な料理が支持され、時短ブームも平成の初めと終わりの二度起こっている。中食(編集部注:総菜やコンビニ弁当などの調理済み食品を自宅で食べること)需要が増加し、2013年にオイシックスが発売してからミールキット市場が急拡大するなど、手間を省く傾向は年々強まっている。
原因の一つは、働く女性が増えたからだ。総務省労働力調査によると、1997年以降は現役世代の働く既婚女性は多数派になり、2017年には専業主婦の約2倍にもなっている。シングル化も進み、仕事を持ちつつ日々の料理も受け持つ人が多くなった。家事に割ける時間が限られる生活で、外食や中食といった外注料理のニーズが高まったのである。
アンケートから垣間見える、自宅で料理をする回数の増加
だが、料理の技術がまったくない、あるいはやりくりの技術がないと、何かあったときに、困る。それは震災などの大きな自然災害が増えた平成時代に、切実さを増した。そこへ起こったコロナ禍である。ふだん自炊しない人も、いつもの外食店で食べられなくなった。仕事が減り、あるいは失業して、節約を迫られている人もいるだろう。そして、ふだんから料理している人ですら、負担が増えていることが分かった。
そのことを明らかにしたのは、アイランドが4月10日~16日に行った、家庭での料理の変化に関するアンケート調査である。対象は、同社が運営するレシピブログと、日本最大級の料理インスタグラマーコミュニティ「フーディーテーブル」利用者である。
すると、自宅で料理する頻度が増えた人は、「増えた」「まあまあ増えた」が合わせて69%もいた。内容は、「短時間で作れる料理」が54%で1位、2位は「パスタやうどん、焼きそばなどの麺類」で53%、と時短料理の割合が高い。「レトルト食品や冷凍食品など半調理でできる料理」も22%いる。
困っていることのトップ3は、「献立のレパートリーに悩む」61%、「毎食作るのが大変」52%、「栄養バランスに配慮すること」49%となっている。ふだんより料理する頻度や量が増えたことによる負担が、如実に表れている。
一方で、増えた料理の3位は「手作りのパンやスイーツ」で42%もいる。「いつもより時間がかかる料理」が5位で33%、「外食で食べるような料理」も16%と、手間がかかる料理を趣味的に楽しむ人も少なくない。パンやスイーツについては、コロナ禍の巣ごもり生活でにわかに手作りブームが起こっており、小麦粉などの材料が一時的に棚から消えたスーパーも多い。
「子どもが喜ぶ料理」28%、「子どもと一緒に作れる料理」18%と、子どもとのコミュニケーションを重視した料理を選ぶ人も目立つ。給食の楽しみを一時的に失った子供たちへの配慮や、家族で過ごす時間を大切にしようという気持ちの表れ、あるいはこの機会に子供に料理を教えようということかもしれない。
家族の家事参加が今ほど求められているときはない
こうした調査結果から、非常事態が起こった今、問われているのは自炊力という側面が見えてくる。それはどういうことか、考えていこう。
アンケート対象者は、料理への関心が高い人たちと考えられる。しかし、そういう人たちでさえ、「負担が大きい」という声が最も多いということは、コロナ禍の不便な生活のしわ寄せが台所の担い手に来ていることがうかがえる。何しろ一番負担が増えた人たちは、ふだん外で食べている家族にまで毎日毎食、作らなくてはならなくなったのだから。
巣ごもり生活の今、第一に求められるのは、手早く料理する時短技術だ。次は栄養のバランスを考え、献立に変化をつける知恵。レパートリーの多さ、あるいは応用力があるかどうか。こういうときに、やりくり術まで含めた自炊力が高い人は、乗り切りやすいだろう。
負担の大きさについて言えば、家族の家事参加が今ほど求められているときはない。料理を一緒にできる、あるいは交替で作れる人がいれば負担を減らせるし、気分的にもラクだ。こういうときだからこそ、滅多に台所に立たない人が料理に参加してみるのもいい。料理は苦手でも洗い物が得意など他の家事の能力があるかもしれない。ふだんから家事を分担している家庭では、より積極的にこれまで受け持っていなかった家事を引き受けることが望まれる。料理は自分の担当でないから、と今まで通りの生活をしようとしないで、家事参加をすれば、家族の絆が深まるかもしれない。
しかし、やろうと思えばできるはずなのに、完全にお任せの家族がいる場合は負担が何倍にも増えているのではないか。そうでなくても、外出自粛などでストレスフルな日々の負担感は大きい。
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クックパッドの検索サービスから見えてくること
興味深いのは、アンケートで真逆の傾向も出ていることだ。この機会に料理を始める人たちが増えているのは、なぜなのだろうか? スーパーから小麦粉が消えるほど売れるのは、幅広い層が料理を楽しんでいるからと考えられる。
3月の時点だが、クックパッド食の検索サービス「たべみる」でも、「手作りパン」の検索頻度が3月9日の週に前年の2倍になる、ギョウザの検索頻度が上がるといった現象が起こっていた。レシピを検索するのは、作り方が分からないから、つまりふだんは作らない人が作ろうとしたことを表す。災害と違い、インフラが整った状態での巣ごもり生活。趣味的に楽しめるものが限られている中で、料理をその対象に選ぶ人も多いのではないか。
この機会に初めてパンやスイーツを作った人、あるいは作ったことがない手間がかかる料理に挑戦した人は、たくさんいるのかもしれない。それは料理の腕を上げる、あるいは料理の楽しみを発見することへもつながる可能性を秘めている。
ふだんできない趣味的な料理に挑戦したり、家族とのコミュニケーションの場に変えている人たちは、高い自炊力を持っている。危機をチャンスに変える発想は、単調な生活に変化をもたらす知恵でもある。
結局、“自炊力”とは何なのか? 必要なのか?
非常事態は、いつどのような形で起こるかわからない。そういうときにふだん、料理する習慣があるかどうかが、分かれ道になる。今は頻度が増えた食事のやりくり術が求められているし、もし災害が起きた場合にインフラが限られる中で工夫する知恵が問われる。
一方で、この機会に料理を始めた人もいるのではないか。そんな人にとって今は、料理を覚える、レパートリーを増やすいい機会でもある。幸い、レシピサイトは山ほどあり、初心者向けからプロ級の料理まで、レベルや好みに合わせたレシピ本を選べる。料理は毎日手を掛けなくていい。外食や中食などの選択肢があるときは毎日作らなくていい。しかし、料理は作れた方が、クオリティ・オブ・ライフは確実に上がるし、健康管理もしやすくなるはずなのである。
この非常事態を機に、料理を担当してこなかった人も、料理を始めたばかりの人も、「自炊力」を高めてみてはいかがだろうか?
(編集:榊原すずみ)
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May 23, 2020 at 01:10PM
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