ガンボ・スープとはオクラのスープという意味で、オクラでとろみをつけたトロトロのスープです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんによる、やさしいご馳走“パリ・スープ”のレシピです。 【写真を見る】辻 仁成のパリ・スープ“ガンボ・スープ”のつくり方
■ニューオリンズの味、ガンボスープ 今から20年前、北米をアムトラックで縦断する旅に出ていたぼくはニューオリンズでこの「ガンボ」スープと出会ったのです。黒人シェフのジョルジュさんと知り合い、アメリカ南部家庭料理レストラン(名前は忘れちゃったのですけど)、の結構広い厨房で、手ほどきを受けました。「とにかく、決め手はルーなんだよ」とジョルジュさんは熱心に教えてくれました。笑うと白い歯が印象的で、大きな手で木べらを動かしながら、ガンボ料理についていろいろと教えてくれたのです。 アムトラックは、とにかくバカでかいアメリカそのもののような列車で、正面から見るとガンダムみたいな顔をしています。寝台車もかなり広くて、その列車でぼくはニューヨークからテキサスを経由し、ロサンジェルスまで旅をしました。テキサス州のヒューストン、ニューメキシコなどに立ち寄りましたが、その中でも、ニューオリンズは忘れられない土地となりました。アムトラックがニューオリンズに入る頃から何か得体の知れない予感、霊的な波動がひたひた、ひたひたと迫ってくるのです。まっさきに窓から見えたのは地面に居並ぶ夥しい数の石のお墓でした。 ニューオリンズは陽気な街で、カントリーやブルーズの音がそこら中で溢れていて、楽しかったのですが、夜になると、不意に世界が一変、ぼくは深夜に何度も幽霊の襲撃を受けることになります。ぼくはもともと霊感が強いので、こういうことは珍しくないのですが、手ごわい相手でした。夜中に、ぐんと激しい衝撃を受け、目を覚ますと、ぼくの左手首を黒い女性の手が押さえつけていました。顔とか身体は見えません、見えているのは腕だけ……。念仏を唱え、何度も払いのけ、その度にシャワーを浴びに行くのですが、明け方、なんとか霊を払いのけシャワーを浴びようとしたら、なんと、風呂場の戸が内側からカギをかけられ開かないじゃないですか!さすがに悲鳴を上げてしまいました。ニューオリンズ全体が沼地のような独特の空気感を有しており、霊魂と生きている人々が共存をしている、そんな印象だったのです。 そのことをジョルジュさんに伝えると、ガンボを食べたら、霊が寄り付かなくなるから、たくさん食べなさい、と笑いながら教えてくれました。どこまで信ぴょう性のある話しか分かりませんが、彼が作ってくれたトロトロのガンボは、ぼくがアメリカで暮らした一年間の中で、もっとも美味しいスープ料理でもありました。不思議な粘り気がもたらすエネルギーがぼくにこれまでにないパワーを注入してくれたのです。それ以降、ぼくは元気が出ない時にガンボを作って食べています。そういえば、あれ以来、霊には取りつかれていませんね、えへへ。 さて、では、ガンボ・スープを皆さんと一緒に作ってみたいと思います。もっとも大事なことは、根気強くルーを作ることにあります。 □ガンボ・スープのつくり方 ◇材料 (4人分) 小麦粉:1/2カップ バター(無塩):1/2カップ 玉ねぎ:小1個 セロリ:1本 にんにく:4片 オクラ:200g 赤ピーマン:1個(パプリカ) 有頭海老:10尾 トマト水煮缶:1/2缶 チキンブイヨン:1個 レッドペッパー:小さじ2 チリパウダー:小さじ2 塩:小さじ2 黒胡椒:小さじ1 パセリ:適量 水:1.5~2L (1)ルーをつくる フライパンを弱火から中火のあいだで熱し、バターを溶かし、そこに小麦粉を投入し、木ベラでとにかく、根気強く根気強く火を入れていきます。最初はクリーム色系ですが、15分から20分炒めていくときつね色に変わります。「焦がさないように、目を離さないこと。手を休めないことが大事だよ」とジョルジュ先生は教えてくれました。 (2)野菜を炒める その横で、鍋にちょっとだけサラダ油(分量外)をひいて、みじん切りにした玉ねぎ、セロリ、にんにくを軽く炒めます。そこに先の1のルーを投入し、混ぜてください。なじんだら、トマト水煮缶、1cmにカットしたオクラ、ざく切りにしたパプリカを入れ、有頭海老の頭の部分には味噌が入っているので茶こし袋の中に詰め、だしをとるために、一緒に入れます。※海老は火を入れすぎるとぱさぱさになってしまうので、身の部分は最後に入れます。 (3)水を加え煮込む さて、そしたらそこに、今度は少しずつ水を加えていくのですが、これが結構な量を入れることになります。チキンブイヨンを一つ放り込んで、弱火にし、1時間半くらい煮込むと野菜の味が出てきます。 (4)調味する レッドペッパー、チリパウダー、黒胡椒、塩、みじん切りのパセリなどで味を調えます。最後に、海老の身を入れて、火を強め、海老に火が入ったら完成となります。 トロトロのガンボの食感は本当に癖になりますよ。カレーに飽きたら、ガンボです。ボナペティ! 文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac
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