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Sunday, June 6, 2021

直前予測:次期OSから浮かび上がる新機能は? 新型MacBook Proは登場する? アップルが「WWDC 2021」で発表すること - WIRED.jp

最近のアップルは注目の的だ。悪名高い秘密主義を貫く強大なアップルの内部構造の一端が、5月に始まったエピックゲームズとの裁判で明るみにされたからである。

アップルは「App Store」によってモバイルアプリの経済圏をつくり上げ、数十億ドル規模の事業へと成長させた功績を評価されることがある。だがそれは同時に、アップルがソフトウェアを変更するたびに、アプリ開発者と消費者の双方に大きな影響が及ぶことも意味する。

そんなわけで、アップルのソフトウェアについてのさらなるニュースをお届けしたい。今回は毎年恒例となった開発者向けカンファレンスのニュースだ。

WWDC 2021」は6月7日の午前10時(米西海岸標準時、日本の8日午前2時)から、アップルの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックの基調講演で幕を開ける。続いて、ほかのソフトウェア部門のトップや主要アプリ開発者がデモンストレーションを披露する。なぜなら、これはソフトウェアのカンファレンスだからだ。そしてアップルは、アプリ開発者と素晴らしい関係を築いていることを示すために、ベストを尽くすだろう。

とはいえ、今回のWWDCも昨年と同様にオンラインで開催される。チケットを買う余裕がない人や直接会場に行けない人にしてみれば、より参加しやすくなっている。一方で、実際に人に会えるイヴェントが醸し出すエネルギーや偶然の出会い、仲間意識といったものには欠ける可能性が高い。

そこでアップルは、今年は新たに「Digital Lounges」と呼ばれる交流の場をオンラインで提供する。だが、テキストによる質疑応答セッションは、コーディング仲間と一緒にコーヒーをがぶ飲みするほどには楽しい時間にはならないだろう。

WWDCの基調講演については『WIRED』でもお伝えするが、アップルのウェブサイトYouTubeチャンネルでライヴ配信を視聴することも可能だ。基調講演を皮切りにカンファレンスは1週間にわたって続き、アプリ開発者に向けた200以上のオンラインセッションが開催される。

iOSとiPadOS:さらにプライヴァシーを重視したOSへと進化

WWDCはアップルがiPhoneの次世代OSを発表する場となっている。今回のカンファレンスで発表されるソフトウェアのアップデートのなかでも、「iOS 15」が最も重要なものになるだろう。

世界中で10億台以上が使われているiPhoneは、いまなおアップルの看板商品である。そしてiOSのアップデートは、人々がもっている旧型のiPhoneが秋になったらどんな“新しいもの”に感じられるのかを決定づけることになるからだ。それにiPhoneはもはや単なる電話ではなく、成長し続けるアップルのサーヴィス事業への入り口でもある。

ブルームバーグの報道によると、iPhoneで実施される予定の重要なユーザーインターフェース(UI)のアップデートには、ロック画面と通知システムにおいて予定されているという。iPhoneユーザーは現在の状況(運転中や睡眠中など)に応じて個別の設定をできるようになり、自動返信の機能が強化されるようだ。

また、ユーザーがiPhoneから離れられない要因になっている「メッセージ」にも、いくつかのアップデートがあると見られている。ちなみに「メッセージ」は、ユーザーがiPhoneからAndroidへ乗り換えることをアップルがソフトウェアの力で阻んでいる典型的な事例のひとつでもある。

クックとアップルでソフトウェア部門を率いるクレイグ・フェデリギが、プライヴァシーにも重点を置くことは間違いないだろう。アップルが2020年に発表したアプリの透明性に関するフレームワーク「App Tracking Transparency(ATT)」は、「iOS 14.5」のリリースに合わせて有効化されたが、そこから議論の的になっている。フェイスブックをはじめとする大手から中小デヴェロッパーまであらゆる規模のアプリ企業が、アップルによる広告トラッキングの制限は自社の事業に大打撃を与えると指摘しているのだ。

次期OSとなる「iOS 15」で実現する可能性のある変更点のひとつは、プライヴァシーに焦点を当てたメニューのようなものになるだろう。そのメニューを使えば、現在はたまにポップアップ通知されているバックグラウンドでのアプリによるトラッキング状況に加えて、どの広告が秘かに自分をトラッキングしているのかを確認できるようになる。

こうした変更点の一部は、「iPadOS」の最新ヴァージョンにも反映される可能性がある。iPadOSはタブレット端末ならではの体験をもたらすとアップルは主張しているが、相変わらずiOSの派生ヴァージョンのようにしか感じられない。

ブルームバーグの同じ記事によると、iPadOSのウィジェットが刷新される可能性があるという。ウィジェットは現在のOSではホーム画面の左側に配置されているが、近いうちにホーム画面の任意の場所へと移動できるようになる。これがアップルが考えるカスタマイズとコントロールということなのだろう。

また、「iPad」(特に「iPad Pro」)はアップルにとって技術的な進歩を披露する舞台にもなっている。このため新しいチップと「LiDAR(ライダー)」スキャナーの両方を活用したより多くの拡張現実(AR)機能が、iPadでも訴求される可能性がある。

今回のカンファレンスで披露される新しいソフトウェアは、これまでと同様に今年の後半までは一般に提供されることはないだろう。だが、ソフトウェア開発者や熱心なベータテスターは、それよりも早く利用できるはずだ。

macOS:iPadとの互換性と独自チップ対応に注目

Mac用OSである「macOS」の最新ヴァージョンは、数字の「12」になるだろう。通称のほうはまだわからないが、アップルは命名の慣例を維持するだろうから、カリフォルニアの名所にちなんだ名前になるはずだ。ただし、今年のアップデートは誰に聞いてもmacOSの「改良」であり、大がかりな見直しにはならないとみられている。

それでもmacOSのアップデートには、注目すべき重要な要素がふたつある。まず、iPadOSとmacOSとの互換性における何らかの統合か機能の強化だ。

アップルは「macOS Catalina」のリリースに合わせて、アプリ開発者がモバイルアプリをより簡単にMac用に移植できる「Mac Catalyst」を提供した。そしてこの数年は、「Apple Podcasts」「News」「株価」など、モバイルアプリの一部をMacにも対応させてきた。

当然のことながらiPadとMacにはタッチスクリーンの有無という違いがあるので(Macにはタッチスクリーンがない)、物理的にはまだ明確に異なるデヴァイスである。だが、いまはアップルが独自開発したチップ「M1」がMacとiPadの両方に搭載されているので、両者のハードウェアの隔たりは縮小している。

そしてもうひとつの注目すべきキーワードは、「M1」である。今年のmacOSのアップデートは大がかりな刷新ではないかもしれないが、アップルはアプリ開発者がこの独自チップ向けにアプリを最適化し続られることを示したいはずだ。なにしろ、M1を搭載したMacでアプリを適切に動かすには、いまだにエミュレーターが必要になるアプリが存在するのだから。

さらに今回のWWDCにおいて、新しいMacのノートPCが発表されるという噂も根強くある。もしそうなれば、ソフトウェアにこれほど重点を置いたイヴェントに意外な展開が用意されていることになる。発表されるとすれば「MacBook Pro」を強化したモデルになる可能性が高く、さらなるパワーを求める筋金入りのプロを満足させるマシンになるだろう。

「アップルはMacBook Proの原点に立ち返る必要が大いにあると思います」と、ムーア・インサイツ&ストラテジーのシニアアナリストのアンシェル・サグは言う。「キーボード上部の)タッチバーがなくなるという噂もありますし、MacBookのセキュリティをまだ向上させることもできます。それにiPadのように、M1チップを強化した『M1X』や『M2』といったチップをMacBook Proに組み込んで、よりパワフルなモデルにすることも可能だと思います」

個人的な意見としては、初めてM1を搭載したMacBookを20年11月にリリースしてからそれほど時間が経っていない時期にアップルが新しいマシンを発表するなら、驚くべきことだと思う。もし噂が事実であれば、アップルが独自チップにどれだけ真剣に取り組んでいるのか、そして現行モデルと並行してこうした新しいチップをどれだけ迅速に開発しているのかを示すものになるはずだ。

watchOS:睡眠追跡が強化、フードトラッキング機能も?

アップルのスマートウォッチについて、注目の事実をひとつ挙げよう。一部の統計によると、「Apple Watch」は世界で最も売れている腕時計だという。スマートウォッチだけでなく、腕時計すべてのなかでの話だ。

注目の事実をもうひとつ挙げておきたいが、これは必ずしもいいことではない。スマートウォッチ界の競争はそれほど激しくない。最大の競合はファーウェイといえるが、同社は米国がソフトウェア分野において中国企業に課した制裁のダメージを受けている。

続くサムスンの市場シェアは、この1年でわずかに減少した。グーグルは年内にも独自の“Pixel Watch”を発売するとみられている。それにグーグルがFitbitを買収したことで、同社のウェアラブル機器のラインナップが強化される可能性もある。だがこうした見通しが現実のものになるのか、まだ断定はできない。

要するに、これまで説明してきた多くのソフトウェアのアップデートと同じように、watchOSにおいてもちょっとした改良や機能強化について発表があり、ヘルス関連アプリのベータ版も登場するとみられている。「これは一大事だ!」と思うかもしれない。手首が何百万もあるような人間でもない限り、ソフトウェアのアップデートがわずかであっても大きな影響があるからだ。

こうしたソフトウェアのアップデートは、Apple WatchのOSの最新版となる「watchOS 8」に盛り込まれる。睡眠追跡機能(Apple Watchが立ち遅れていた分野だ)が向上するほか、ユーザーが食べたものを記録できるフードトラッキング機能が追加される可能性もあるようだ。

アップルはフィットネスプログラムの映像を有料でストリーミング配信する「Apple Fitness+」を、エクササイズバイクやトレッドミルで知られるPelotonに対抗すべく生み出している。だが、このサーヴィスはまだ新しい上にApple Watchも必要なので、Fitness+全般に新たな機能が追加されることも期待できる。個人的には、Apple Watchの開発責任者であるテクノロジー担当ヴァイスプレジデントのケヴィン・リンチが、ステージで腕立て伏せを披露してくれることを期待している。

なお、アップルはApple Watchのアクセシビリティに関する新機能の一部について、すでに発表を終えている。そこからは、日常的な移動に支障のある人々にとってより使いやすい製品にするために、アップルがユーザーの意見を真剣に扱っている様子がうかがえる。今回のWWDCでは注目される多くの発表が矢継ぎ早に繰り出されるだろうから(心拍数が上がるほどであることは間違いない)、そうしたなかでアクセシビリティに関する発表が埋没することを避けたかったのかもしれない。

スマートホーム:家庭用の「homeOS」が登場するか

「Apple Fitness+」は、アップルが次々に投入してきた“サーヴィス”のひとつである。サーヴィス分野は同社の事業のなかで急速に成長しており、サブスクリプションという観点からも重要性が増している。

アップルの動向を追いかけている人なら、その背景は理解できるだろう。ここ最近になってiPhoneの販売数が頭打ちになるなかで、アップルは人々を有料サーヴィスに引き込むことでユーザー1人当たりの利益を増やそうとしているのだ。そうした手法は、「iCloud」から「Apple Music」「Apple TV+」「Apple Fitness+」へと広がっている。

この4月にアップルは「Apple TV 4K」を発表したばかりである。それを考えればWWDCでは、急成長しているエンターテインメントプラットフォームが大々的に訴求されたり、デヴァイスとサーヴィスのさらなる融合(Apple TVで視聴するFitness+がApple Watchに対応したように)が発表される可能性もある。

アップル情報サイトの「MacRumors」によると、最近になってアップルのエンジニアリング職の募集要項に「homeOS」という言葉が含まれるようになったという。これは、ホームエンターテインメントやスマートホーム制御の分野が拡充される可能性を示唆するものだ。一方で、既存の「HomeKit」(さまざまなスマートホーム製品をiPhoneに対応させるためのフレームワーク)が消費者向けにリブランドされるだけの可能性もあるだろう。

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ここ最近のアップルは、アプリのプラットフォームが拡張されたり、サブスクリプションサーヴィスが変更されたりするたびに不評を買っている。5月にはエピックゲームズとの裁判が始まり、アップルは3週間にわたって厳しい目に晒された。法廷においてエピックゲームズは、アップルの中心部やそのビジネス手法が腐敗していることを示そうと躍起になっていたという。

関連記事アップルはゲーマーより「利益」を優先するのか:“手数料訴訟“でのティム・クックの証言から見えた思惑

アップルは「App Store」でアプリを販売するデヴェロッパーに課している30%の“アップル税”について、最近になって一定の譲歩の姿勢を示してきた。デヴェロッパーが長期的なサブスクリプションモデルを維持できる場合には、自社の取り分を減らしたりしているのだ。

それでもスポティファイやMatch Groupのような大手から独立系のアプリ開発者に至るまで、多数のデヴェロッパーが「App Storeの独占的な運営手法や権力の乱用」を訴えている。こうした声は高まるばかりだ。

こうした議論や5月の裁判からは、さまざまな根本的な疑問が生じてくる。いまの最新テクノロジーの時代において、ソフトウェアを配信する市場の価値をどう評価すべきなのか。幅広い影響を及ぼすエコシステムにおける“ヴェンダーロックイン”(囲い込み)を、どう考えるべきなのか。「App Store」において可能な限り高い安全性の維持が求められるとするアップルの懸念は、利他主義の名を借りた資本主義にすぎないのだろうか──。 

アップルはWWDCにおいて、こうした頭の痛い疑問に答えるのだろうか?

その可能性はかなり低いだろう。だが、アプリの片隅に表示される通知バッジのごとく、無視することなどできないはずだ。

※『WIRED』によるアップルの関連記事はこちら。WWDCの関連記事はこちら

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