明治大学の宮下芳明教授は、デジタルコンテンツ技術の展示会「DCEXPO 2021」(幕張メッセ、11月17-19日)で、ディスプレイに映った料理の味を再現して出力できる「Taste The TV」(TTTV)を出展した。長年、味の研究をしてきた宮下教授は、「テレビから映像や音声が出るのと同じように、味も出力したい」との思いから、味覚ディスプレイを個人開発してきたという。
TTTVはディスプレイとタンクで構成されるデバイス。タンクの中には食塩水やグルタミン酸水溶液などが入った約10本のカートリッジがあり、これらを混ぜ合わせることであらゆる味を再現する。できた味をタンク下に設置したシートにスプレーし、ディスプレイの上にかぶせることで、直接なめられるディスプレイとしている。
グレープフルーツやピザなど食材から料理まで再現できる。香りを演出するカートリッジもあり、アルコールカートリッジをセットすればワインの再現もできるという。
“味見”してみた
DCEXPOでは、試食会の時間になった瞬間に人だかりができるほどの注目度だった。感染症予防のためディスプレイをなめることはできなかったが、あらかじめ用意されたグレープフルーツ、チョコレートケーキ、ピザの味サンプルを試せた。
実際になめてみたところ、グレープフルーツとチョコレートケーキはクオリティーが高かった。グレープフルーツは口に入れた瞬間に感じる酸味苦みだけでなく、香りも爽やか。サンプルが液体なのでほとんど果汁のようだった。
チョコレートケーキは砂糖多めでかなり甘いタイプだと感じた。口の中が全体的に甘さで満ちるような味だったが、鼻に抜ける香りも再現度が高く、サンプルの中では最もレベルが高く感じた。味も香りも「あ、確かにこれは食べたことある。普通においしい」といった印象だった。
一方、ピザは、食塩水やグルタミン酸水溶液を混ぜたような味で微妙だった。周囲にいた人々もおおむね同様の感想を持ったようだ。宮下教授によると、ピザは具材が多く味が複雑なため、1つの味サンプルでは再現しにくく難易度が高いという。
アイデアはコロナ禍の制限から
宮下教授は味の専門家として研究を続けてきたが、TTTVのアイデアが浮かんだのは新型コロナウイルス感染症が拡大し始めてからだった。政府から移動制限が要請される中、テレワークをはじめ、さまざまな活動が遠隔で行われるようになった。
宮下教授は「コロナ禍で遠隔でできることもあれば、実際にやってみないと分からないこともあると実感しました」と話す。映像や音声は遠隔地に送れるが、宮下教授はそれと同じように味も伝送したいと考えた。そうすれば、料理番組やグルメ旅番組などで視聴者に直接味を伝えられる。
今後は小型化や、放送・メディア業界への展開も検討したいとしている。「今はオーディオビジュアルという言葉がありますが。これを“オーディオビジュアルテイスト”にしたいですね」(宮下教授)
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