富山県氷見市中央町。レトロな雰囲気が漂うビルの1階に先月、テイクアウト専門のスープ店がオープンした。元同市職員の林美湖(よしこ)さん(53)が、空き店舗の解消や地域活性化に役立てようと開業した「スウプはやし」で、独自レシピによるオリジナルのスープ3種類を味わうことができる。「古い建物の良さを知ってもらうと同時に、街のにぎわいづくりに少しでも役立てれば」と話す。
新潟県佐渡島出身。大学進学後は東京で暮らした。大学卒業後は商社へ入社。だが、育休で仕事を離れているうちに「もう一度、学び直したい」との思いが募った。
以前から、家の図面を見ることが好きで、設計に興味があった。一念発起し、大学の建築学科へ入学。大学院でも学び、修了後は横浜市役所で住民と一体となった街づくりなどに取り組んだ。
氷見市で暮らし始めたのは2016年。観光を兼ね、高校の体育館を再利用した市の新市庁舎の見学に訪れたことがきっかけだった。市内を散策すると、市中心部を湊川が流れる水辺の風景に心を癒やされた。東京で30年近く暮らし、過密な都会暮らしにも疲れていた。
ちょうど、市が実施していた職員採用試験を知人から勧められて受け、採用された。市役所では都市計画課などで勤務。氷見に住むきっかけになった湊川の良さを広める市民グループを立ち上げ、川に親しむイベントなどにも取り組んだ。
公務員の仕事にはやりがいを感じていたが、「いつか起業したい」という思いもあった。「本当にやりたいことをしよう」。今年7月に市を退職し、開店に向けた準備を本格的に始めてきた。
店舗がある建物は1968年に造られた3階建て。林さんは東京にいた頃、古い建物があっさりと壊されるのをたびたび目にしたという。川沿いに面した建物に一目ぼれ。1~3階の一角を購入して「昭和レトロビル」と名付け、活用することにした。店舗部分は以前、タクシー会社で働く運転手の待合室として使われていた。出来るだけ昔の名残を残そうと、改修は最低限にとどめた。
スープ店にこだわったのは、「自分が作ることも食べることも好きだったから」。温かくてたくさんの具が入ったスープは、2人の子どもたちも大好きで、よく作っていたという。
店では、旬の野菜をふんだんに使ったポタージュなどを提供。以前から作っていたものに加え、レシピ本などを見ながら林さんがアレンジを加えた。メニューはすべて週替わりで、顧客が飽きないように工夫もしている。「仕事で忙しいお母さんやひとり暮らしの高齢者の方に味わってもらいたい」と話す。
「スウプはやし」の営業は水曜から土曜の午前11時半~午後6時。売り切れ次第終了。スープは量り売りで、マグカップや鍋を持参した場合、容器代を割り引く。
2階はパフェ店、3階は民泊施設として活用する予定だ。民泊施設の利用者には周囲の飲食店で飲食してもらうことで、地域の活性化にもつなげたいという。「滞在してもらえばより街の良さを知ってもらえる。移住者増にもつながれば」と夢を膨らませている。(井潟克弘)
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