横浜のラーメン史を語るうえで、絶対外せないのが「家系総本山 吉村家」。同店を取材・掲載する場合、もちろん総帥・吉村実さん(写真)の許可を取らないといけません。電話やメールではなく、直接店にお伺いするのが不文律。しかしそれがつらい! 何がつらいって、吉村さんが店にいらっしゃる早朝に行かないといけないからです。とはいえ、そんなことも言っていられないので、まだ夜が明ける前の始発で行ってきました。
70代半ばとなった今も吉村さんは毎日夜中から厨房に立ち、自ら仕込みを行っています。朝6時に店に着くと、スープやチャーシューなどの仕込みはすでにひと段落していて、すぐに話を聞いてくれました。さっそく取材・掲載をお願いすると、「つまらない原稿を書いたら、承知しないぞ!」と軽いジャブを浴びます。でもそんな言葉とは裏腹に、「チャーシューは夜中の2時から仕込みを始めるんだ。別に高級なブランド豚を使わなくても、手間暇をしっかりかければおいしいものができる」、「スープには豚のほかに、4種類の鶏を使っているんだ。そんな店は他にはないぞ」など、ラーメンに対する熱い思いを語ってくれて、その場で取材もさせていただきました。
そんな吉村さんから「ウチのラーメンが一番おいしい時間を知っている?」と不意の質問が。私自身、これまで何十回と食べてきましたが、考えたことはなかったです。答えに詰まっていると、「11時、13時、15時だよ。まず開店時間(11時)に合わせて最高の状態にスープを仕上げている。そのあとは一定の間隔で材料を付け足していくから、その時間が一番おいしいんだよ」とのこと。
なるほど。よし、今度はその時間に行こう。そう思っていると、「やばい、やばい。ついポロっと言っちゃった(苦笑)。この話は今まで誰にもしたことがないんだよ」と我に返る吉村さん。最後は「お前がいるとまた余計なことをしゃべっちゃいそうだから、もう帰れ!」と追い出させるように店を出ましたが、本当にいい話が聞けちゃいました。やっぱり朝起きは三文の徳ですね!
(ラーメン特集担当=河合)
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