ほとんどのゲーミングマウスには、さまざまなカスタマイズを行なうための専用ユーティリティが用意されている。キー割り当てやDPI(Dots/Inch)調整などの基本的な設定項目のほか、ゲーム向けならではと言える機能を搭載しているのが大きな特徴である。
たとえば、キー割り当てを自由に変更できる機能はゲーマーにとって重要だ。マウスのボタンに配置したいキーは人によって千差万別だし、プレイするゲームによっても変わってくるからだ。
また、ボタン数を実質的に倍にできるシフト機能は、人によっては役立つ機能であり、カーソルの動作を滑らかにするために、マウスパッドに合わせてセンサーをキャリブレーションする機能が提供されているものもある。もちろん“ゲーミング”の代名詞たるLED照明のカスタマイズも基本的に行なえる。
ただ、こうしたユーティリティはメーカーごとに大なり小なり機能な違いがある。ここでは、ゲーミングマウスとして人気のあるロジクール、Razer、ASUS、Corsair、SteelSeriesの5社の製品を集め、そのユーティリティを使い比べてみた。この記事を読んで、購入の際の参考にしてほしい。
なお、同じメーカーのマウスでも、製品によってはユーティリティで利用できる機能とできない機能があったりする場合もある。今回は各社の1製品しか試していないので、機能を網羅できていない可能性があることに注意されたい。
ロジクール「G Hub」
グラフィカルで直感的な操作が行なえる
ロジクール「G Hub」(ver.2022.4.250563)のメイン画面には中央に使用中のデバイスが表示されており、その上部に「ゲームとアプリケーション」画面へのボタン、下部に新たなライト効果やプロファイルを入手できるリンクが配置されている。
複数の対応デバイスが接続されている場合には、それぞれのイメージ画像が表示され、これらをクリックすることでカスタマイズ画面に移行できる。高機能なユーティリティのわりには、全体的にスッキリしたユーザーインターフェイスといった印象だ。
ゲームの登録
「ゲームとアプリケーション」画面では、G Hubが自動検出したインストール済みゲームがリストアップされている。手持ちのゲームが認識されない場合は、画面左上の「+」ボタンから手動で追加することも可能だ。ゲームばかりでなく、Webブラウザやテキストエディタなどの実用アプリケーションも登録できる。
ゲーム(またはアプリケーション)のいずれかを選択すると、紐付けられているプロファイルが下段に表示される。ここで新しくプロファイルを作成すれば、選択中のゲームに追加されるわけだ。また、プロファイルを上段のゲームにドラッグ&ドロップすれば、そのゲームにコピーできる。ただこの辺り、グラフィカルなUIにこだわるあまりか、分かりにくい上に使いづらいのが難点となっている。
DPIの変更
前述した通り、メイン画面にあるデバイスのイメージ画像をクリックすることで、プロファイルのカスタマイズ画面に移行できる。マウスの場合は「感度(DPI)」「割り当て」「LIGHTSYNC」の3つに分けられており、画面左端のボタンで切り替えるようになっている。カスタマイズしたいプロファイルは、画面左上のドロップダウンメニューから選択する。
まずは「感度(DPI)」から見ていこう。この画面では、5つのステージに分けられた感度を、スライダーをドラッグすることで50DPI刻みで調整できる。
注目したいのは「DPIシフト」と呼ばれる機能だ。これは、「DPIシフト」ボタンを押している間だけ、一時的に別の感度に移行するというもの。DPIシフトに指定したい感度を選択し、画面右下の黄色の「◆」アイコンをクリックすれば、その感度がDPIシフト用として割り当てられる。
機能の割り当て
「割り当て」画面では、文字通り、マウスのボタンにキーやショートカット、ファンクションなどを割り当てることができる。やり方は簡単で、画面左のリストから適用したい項目をドラッグし、マウス画像のボタンにドロップするだけだ。「コマンド」タブにコピーやペースト、ゲームバー表示などのショートカット、「キー」タブにAやB、@マークなどの単独のキー、「システム」タブにDPIのアップ/ダウンやメディアの再生/停止などのファンクションが用意されている。
マクロの作成
「マクロ」タブでは、自作のマクロを作成可能だ。単独のキーだけでなく、前述したショートカットやファンクションも組み込める。G Hubにおいては、「A+B」や「Ctrl+Alt+C」などといった複数キーの同時押しはマクロ機能で作成する。組み合わせの自由度こそ高いが、ボタンのカスタマイズ機能で手軽に同時押しを割り当てられるほかのユーティリティと比べると、少々面倒と感じる部分だ。
DiscordやOBSなどの外部アプリとの連携
ユニークなのは「アクション」タブ。ここでは、特定のアプリケーション向けのショートカットを導入するプラグインをインストールでき、そのアプリケーションの使い勝手を飛躍的に高められるのだ。
現状、対応しているのは「Overwolf」「Discord」「OBS」の3つだけだが、これらのアプリケーションを頻繁に使うなら、プラグインを入れてみて損はないだろう。試しにOBS用のプラグインをインストールしたところ、録画やストリーミングの開始/停止、マイクのミュートなど、多数の便利なショートカットが使えるようになった。
Gシフトで割り当て機能を増やす
「Gシフト」も積極的に活用したい機能の1つだ。これは、先に紹介した「DPIシフト」と似た機能で、「Gシフト」ボタンを押している間だけ、ボタンの割り当てがセカンダリに切り替わるというもの。マウス画像下のスイッチをGシフト側にセットした上で設定したボタンの割り当てが、セカンダリとして機能するようになっている。
なお、Gシフトはデフォルトではボタンに割り当てられていないので、ユーザーが手動で設定する必要がある(「システム」タブにある)。
ライティング機能
「LIGHTSYNC」画面では、LEDライティングの色や輝度、効果、速度などを細かく調節でき、好みの照明パターンを作成できる。マウス画像下の「ライトの同期オプション」ボタンからは、G Hubが認識したほかのデバイスと照明パターンをシンクロさせることが可能である。
ユーザー作成のプロファイルのダウンロード
メイン画面下部の「最新のライト効果を表示する」や「最も人気のあるゲーミングプロファイルを探索する」からは、G Hubユーザーがカスタマイズしたプロファイルをダウンロードし、使用することができる。
もちろん、入手したプロファイルをベースに、自分流のアレンジを加えることも可能だ。なお、この機能を使うには、メイン画面右上のアバターアイコンからアカウント画面に入り、記入欄に入力しておく必要がある。非常に分かりづらい仕様となっているので、この点は注意である。
Razer「Synapse 3」
ボタン一発でセカンド設定にシフト可能
Razerの「Synapse 3」(ver.3.7.331.32911)のユーザーインターフェイスは、最上部に「SYNAPSE」「マウス」「プロファイル」タブがあり、その下に各セクションにアクセスするタブが配置されているという、二重の入れ子構造になっている。
トップの「SYNAPSE」タブの下には、初期画面となる「ダッシュボード」、追加機能を導入できる「モジュール」、デバイス共通のショートカットを作成できる「グローバルショートカット」のタブが並んでいる。ダッシュボードのデバイス画像か上部の「マウス」タブから、マウスのカスタマイズ画面に移行できる。
機能の割り当て
カスタマイズのメインとなる「マウス」タブの下には、「カスタマイズ」「パフォーマンス」「ライティング」「較正」「パワー」の5つのタブが配置されている。なお、Bluethooth接続時には、「較正」タブは表示されない仕様となっているようだ。
「カスタマイズ」タブのボタン設定では、キー登録はもちろん、プログラムの起動、Windowsショートカット、最大250文字までのテキストなど、多彩な機能を割り当てることができる。キーはAltやCtrlなどの修飾キーとの組み合わせも可能だ。また、ロジクールのG Hubの節で紹介した「Gシフト」に相当する「HyperShift」機能もある。
DPIの変更とライティング機能変更
「パフォーマンス」タブではDPIの調節を行なえる。5ステージに分かれており、それぞれスライダーで50DPI単位での設定が可能。また「ライティング」タブには5種類の照明プリセットが用意されているほか、追加モジュール「Chroma Studio」を導入すれば、より細かな設定や他デバイスとの同期を行なえる。
センサーの調整
「較正」タブは、マウスパッドに対するセンサーの反応を調整できるセクションだ。「Focus+」センサーなどの高性能センサーを搭載したマウスの場合、「スマートトラッキング」の項目が表示され、接地面との距離でセンサーをオン/オフする「トラッキングディスタンス」を3段階で設定できる。また「手動較正」では、Razer製マウスパッドのプリセットが多数用意されているほか、手動によるキャリブレーションも行なえる。
ゲームの登録
「プロファイル」タブには、その下に「デバイス」と「リンク中のゲーム」タブが配置されており、「デバイス」タブでプロファイルの新規作成、編集、削除や、ゲームとの紐づけなどを行なえる。
プロファイルとゲームを紐付けるには、「リンク中のゲーム +」の「+」部分をクリックすると表示される「ゲームの選択」ダイアログで、ゲームアイコンの「リンク」ボタンを押せばよい。目的のゲームが表示されていない場合は、右上の「追加」ボタンをクリックし、表示されるリストの中からプログラムを指定する。
また、「リンク中のゲーム」タブには、Synapse 3が認識しているゲームが一覧表示されている。インストール済みのゲームが見つからない場合は、画面左上の「+」ボタンから、ゲームやアプリケーションを追加できる。また、アイコンから紐づけたいデバイスやプロファイルを指定することも可能だ。
マクロの作成
Synapse 3では、マクロは標準機能ではなく、オプション扱いになっている。導入は簡単で、「SYNAPSE」→「モジュール」タブにリストされているモジュールのうち、「マクロ」をインストールすればOKだ。画面最上段に「マクロ」が追加され、マクロ作成機能にアクセスできるようになる。
マクロ自体は高機能だ。キーボードのキー押下はもちろん、マウスのクリックや動作を記録できるうえ、ループの設定や、記録の削除・挿入・編集も行なえる。機能に不足を感じることはないはずだ。
Corsair「iCUE」
CPUクーラーやメモリのLED照明と同期できる
Corsair「iCUE」(ver.4.22.203)のメイン画面は、最上部に「ホーム」と「ダッシュボード」タブが配置されている。このうち、カスタマイズの主体となるのは「ホーム」で、「ダッシュボード」はCPUやDRAM、DPIなどのハードウェア関連の情報を確認する場所だ。
「ホーム」画面には、中央にデバイスの画像が大きく表示されており、左側にはプロファイルやシーン、センサーを設定できるサイドペインが配置されている。マウスのカスタマイズは、デバイス画像の左上にある「キー割り当て」「照明効果」「DPI」などのリンク先から行なうようになっている。
ゲームの登録
プロファイルの作成・編集は、「ホーム」左上のプロファイル名(初期状態では「デフォルト」)から行なえる。作成・編集ダイアログでは、名称やアイコン、プログラムとのリンクを設定可能だ。
また「シーン」は、LED照明のカスタム設定だ。「+」ボタンからシーンを追加することもできる。「センサー」は、「ダッシュボード」画面で確認できるパネルの小型版といったもので、「+」ボタンから表示/非表示を変更可能である。
機能の割り当てとマクロの作成
「キー割り当て」からはマウスボタンのカスタマイズを行なえるのだが、ここは他社製ユーティリティとは大きく異なっている部分だ。
画面左下の「+」ボタン→機能のタイプを選択→割り当てるボタンを指定→キーや機能を決定、という手順となっている。直感的ではないし、工程数が多く、少々面倒に感じる仕様だ。なお、マクロは「割り当てタイプ」で「マクロ」を選択すれば作成できる。
DPIの変更
「DPI」画面では、6ステージあるDPIをスライダーで調節できる。ユニークなのは、X軸とY軸とでDPIを別々に設定できる点だ。デフォルトでは値がリンクしているが、鎖アイコンをクリックすることで、個別に設定できるようになる。
最下段の「スナイパー」は特別な枠で、G HubのDPIシフトと同様にスナイパー機能を割り当てたボタンを押している間だけ、このDPIに切り替えるというもの。ゆっくりと正確に照準を合わせたいシーンで一時的に低DPIにするなど、工夫次第でさまざまな使い道が考えられる機能である。
ライティング機能とアングルスナップ
「デバイス設定」では、ファームウェアの更新やポーリングレートの設定、LED照明の明るさ調節など、マウスのハードウェアに関する設定を行なえる。ここで注目なのは「アングルスナップ」だ。手ブレを自動補正して、カーソルの移動を滑らかにする機能である。
SteelSeries「GG」
1画面に搭載機能の数々を集約
SteelSeriesの「GG」(ver.1.7.1.0)のメイン画面左側には、「Home」「Moments」「Engine」「Giveaways」とタブが並んでいるが、このうちデバイスのカスタマイズを行なえるのは「Engine」だ。
「Engine」画面には、「機材」「アプリ」「ライブラリ」タブがあり、「機材」画面のデバイス名をクリックすることで設定ウィンドウが起動する。また「アプリ」では、「League of Legends」や「Discord」など人気のゲームやアプリケーションと連携してLED照明を光らせられるカスタムエフェクトを導入できる。
「ライブラリ」タブは、GGにゲームを登録する画面。初期状態ではゲームが認識されていないので、「ゲームをスキャン」ボタンをクリックしてインストール済みゲームを登録しよう。スキャンで見つからなかった場合は、「ゲームを追加」ボタンから手動で登録することも可能だ。また、ゲームで使用したいデバイスやプロファイルとの紐づけも、この画面で行なうようになっている。
ゲームの登録/機能の割り当て/マクロの作成
前述した通り、「機材」タブのデバイス欄をクリックすると、カスタマイズを行なえる設定ウィンドウが起動する。このウィンドウには、中央にマウス画像、左側にボタンおよびマクロ、右側にDPIなどの設定を行なえるパネルが配置されている。GGにおけるカスタマイズ項目のほとんどが、この1画面に集約されている形だ。
まずは新しいプロファイルを作成しよう。というのも、初期状態で用意されている「Default」プロファイルは、変更を保存することができない仕様となっているからだ。ウィンドウ左下の「設定」→「+ 新規」ボタンとたどれば、プロファイル作成ダイアログが表示される。このダイアログでゲームとの紐付けも行なえる。
設定ウィンドウでは、マウスボタンのカスタマイズを始め、DPIや加速度、ポーリングレート、アングルスナップなど、一通りの設定を行なうことが可能。また、マクロの作成は、画面左にある「マクロエディター」の項の「起動」ボタンから行なえる。
ライティング機能
設定ウィンドウの「イルミネーション」タブで、「アクティブ」と「リアクティブ」の2種類のライティング設定を行なえる。「アクティブ」は通常の発光、「リアクティブ」はボタンをクリックした時の発光のことだ。
おもしろいのは、アクティブ照明が3つのゾーンに分けられており、それぞれを個別に設定することが可能な点。工夫次第で、個性的で美しいライティングを楽しめる。なお、リアクティブ照明はゾーン分けされておらず、1箇所のみの設定となる。
まとめ - マウス選びにはユーティリティの吟味も欠かせない
今回、ゲーミングマウスのユーティリティ5種を実際に試してみて分かったのは、どの製品も個性的なユーザーインターフェイスを備えており、機能面においては一長一短ある、ということだ。
いずれのユーティリティも考えられた設計で、一部使いにくい部分はあったものの、初見でもほとんど迷うことなく扱うことが可能であった。特に使いやすく感じたのは、RazerのSynapse 3だ。目的の機能を探しやすい2段タブの入れ子構造や、ほどよい大きさのボタンやスライダーなど、奇をてらわないユーザーファーストなデザインという印象である。
一方、機能面では、すべてを備えた“全部入り”はなかったため、ほしいと思う機能が搭載されているかが評価の分かれ目になる。たとえば、シフト機能を重視するならG Hubがよいだろうし、逆にArmoury CrateやGGは選択肢から外れるだろう。中でも多機能なのは、Synapse 3とiCUE、次点でArmoury Crateであろうか。ゲーマー視点で言えば、シフト機能が充実しているG Hubも推したいところである。
これまで見てきた通り、ゲーミングマウスのユーティリティが備える機能の数々は、ゲームをより快適に楽しむ上で有用なものばかりだ。それゆえ、ゲーミングマウスを選ぶ際はハードウェアばかりでなく、ユーティリティという側面からも吟味する必要があるわけだ。ユーティリティの機能を最大限に活用して、楽しいゲームライフを満喫していただきたいところである。
からの記事と詳細 ( ロジクールやRazerなどゲーミングマウスのユーティリティ5種を使い比べてみる - PC Watch )
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科学&テクノロジー
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