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Friday, June 3, 2022

WindowsタブレットPC FMV LOOXの虎視眈々 - PC Watch

 PCの粋はその拡張だ。非力そうに見えるタブレットが周辺機器の拡張でパワフルな力業環境に豹変する。唯一のPCを適材適所で使い、クラウドで支援するなら、モビリティを最優先しつつ奢ったスペックを確保し、利用シーンごとに重装備で拡張するというのは悪くない発想だ。

タブレットというフォームファクタを妥協せずに充実させる

 発売間近のFCCLの「FMV LOOX」をひとあし先にしばらく使わせてもらった。13.3型フルHDディスプレイを持つWindowsタブレットとして世界最軽量599がを達成した製品だ。評価機は第12世代Core i7を搭載、16GBメモリのパワフルなスペックで、プリインストールされているOSはもちろんWindows 11だ。

 有機ELのディスプレイは美しく申し分ない。同社にはLIFEBOOKシリーズに世界最小最軽量の634gのクラムシェルノートPCがあるが、それよりも35g軽い。しかも評価機を実測したら592gしかなかった。

 ただ、この重量はタブレット本体のみのものであって、背面カバーを兼ねたキックスタンドを装着して実測すると735gになった。また、オプションで用意されるキーボードカバーを装着すると1kgを超えてしまう。タッチ対応のLIFEBOOK 2-in-1は868gなので、各パーツをバラバラにできるというだけで、重量的にはかなりのインパクトがあることが分かる。つまり、この製品の最軽量を十二分に堪能するためには、カバーをつけず、キーボードもつけず、裸で使うのがいい。

 Windowsは、以前ほどタッチ操作を重視していないように思う。だから、タブレットのタッチ操作だけでWindowsを使おうとすると不便を感じる場面も多い。一般的なクラムシェルノートPCがタッチにも対応しているというのと、タッチしかできないというのでは、使い勝手が大幅にちがうのだ。

 用途次第ではあるが、それでも文字入力を含め、キーボードなしでも何とかなる。スマホだってキーボードやポインティングデバイスなしで使っているのだから、Windowsでもちょっと慣れれば十分に実用的に使える。スマホのようにフリック入力を使ってもいいし、場合によっては音声入力を駆使してもいいだろう。Windows 11の音声入力は、それなりに優秀だ。また、3本指のジェスチャーでタスクの切り替えやデスクトップの表示などができる。

 さらに、この先、「Windows Subsystem for Android(WSA)」のサポートが日本でも解禁されれば、その利用価値はもっと高まるだろう。LOOXが満を持してハイスペック指向でこのフォームファクタに取り組むタイミングとしては悪くない。

繋いで使うタブレット

 FCCLは、この製品を、既存のPCのコンパニオンとして使うことも提案している。そのためのアプリとして「クリエイティブコネクト」というアプリがプリインストールされている。このアプリは別のWindow PC用に単体のセットアッププログラムがEXE形式のファイルで提供され、このタブレットと別のPCの両方でアプリを稼働させた状態で、USBケーブルで両機を結ぶことで、

  • PC画面をタブレットに複製
  • PC画面をタブレットに拡張
  • タブレット画面をPCに複製
  • タブレット画面をPCに拡張
  • PCとタブレット間でキーボードやマウスなどのHIDを共有して両機を併行して使う

という使い方ができる。複製と拡張の考え方は一般的なマルチディスプレイ環境と同じだ。つまり、このタブレットをモバイルモニターにするような使い方もできるし、古いPCをモニター代わりに使うこともできるということだ。

 タブレット側の汎用拡張用ポートは、Thunderbolt 4ポートが2つ、それだけだ。USB Type-C形状なので、別のPCとの間をType-C→Type-AケーブルまたはType-Cケーブルのどちらかで結ぶ。ケーブルの帯域スペックとしてはUSB 3.0シリーズのGen1(5Gbps)でいい。無理に無線対応させるよりも、ケーブルでの接続を強いるほうが、結果としてトラブルなく快適に利用できるという判断だそうだ。

 また、接続したPC同士でファイルのやりとりをするためのネットワーク共有などもサポートしているが、これについては、クラウドを利用したほうがよさそうだ。そのためにも、もし購入を検討するなら5G通信ができるモデルを選んだ方がいい。カタログモデルにはないが、富士通Webマートで入手できるカスタムメイドモデルで提供されている。WAN対応しているのとしていないのとでは使い勝手は大幅に違う。こうしたフォームファクタだからこそWAN対応していてほしい。

裸で使って599gを堪能

 久しぶりにWindowsタブレットを携行した。最初は、キーボードをいっしょに持ち歩かないと不安でたまらなかったのだが、そのうち、なくてもなんとかなることに気がついた。タブレットに自立させるためにキックスタンドは必須だと思っていたのだが、600gを切るくらいの重量になれば、適当にに立てかけておくだけでも十分だということが分かった。キーボードがない場合は、タッチ操作のために手でささえて使うので、キックスタンドは必要ないことに気がついた。本体だけを裸で携行するようにすれば正味599gの世界最軽量を堪能できる。

 移動先でもキーボードやタッチパッドなどのHIDが絶対に必要で、常時、本体を携行するつもりなら、クラムシェルフォームファクタのLIFEBOOKを選んだ方が使い勝手がいいだろう。ディスプレイのタッチ対応だけをあきらめるか、タッチ対応を選んで、もう少し重量を覚悟するかだ。

 これを機会に、PCでしかできないことっていったい何なのかを考えた。今や、タブレットやスマホでほとんどのことができる。PCは必要ないという論調さえある。だからといってPCの立場が低くなったわけではない。まして、今回、評価した第12世代Core i7に16GBメモリといった余裕のある装備は、何をやるにしても安心できるしトラブルも少ない。やはりPCはこうでなくちゃと思う。

 結局のところ、PCの最たる特徴は拡張性だ。普段はタブレットフォームファクタで非力なように見えても、大画面モニターに接続し、ポインティングデバイスやキーボードを接続するだけで、腰を据えて使える強力な処理性能を持つPCになる。世界最軽量のタブレットと併せて使って似合うのは、27~31.5型のUSB Type-Cで接続できるUSB PD対応4K大画面モニターであり、フルサイズキーボード、そしてマウスだ。

 本体のポートはThunderbolt 4×2のみなので、できればThunderbolt 4ドックがあるといい。なにせ、ケーブル1本を接続するだけで、充電のための電力供給を含め、瞬時に拡張が完了する。用途別に複数台のPCを調達するのは理想だが、コストやスペースなどの都合でそうはいかないことも多い。それならこのLOOXのようなシンプルなフォームファクタを、使うシーンごとに極限まで拡張するというのはありだ。

 タブレットだからといって装備を妥協せずに、普通以上のスペックを持つPCにした意味がそこにある。まさに虎視眈々。タブレットは情報の消費にしか使わないから、そこそこの性能でいいという風には作られていない。LOOXのブランディング、決して伊達ではない。

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