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Friday, January 8, 2021

食べたくても「食べられない」…おじいちゃんの「紙技」料理 - 読売新聞

 新年を控え、大阪市の西滝一彦さん(75)は豪華なおせち料理を用意した。真っ赤な有頭エビや尾頭つきのタイ、紅白のカマボコ――。「でも、ぜんぶ紙やから食べられません」。西滝さんの趣味は、紙で食べ物を再現して人を驚かせること。どこかユーモラスな作風はネットでも人気で、「見た人が笑顔になってくれればうれしい」と話す。(紙WAZA編集長 木田滋夫)

 「もうちょっとで食べるところやったやないの」。帰宅した妻に叱られた。10年ほど前のこと。妻が仕事先に持って行くおやつのビスケットに、段ボールを丸く切った偽物を忍ばせるいたずらをした。西滝さんは定年退職後、「暇つぶし」で段ボールのゴミ箱や模型飛行機を作っていたが、本物そっくりの食品で人を驚かせる楽しさを知ってしまった。

 2年前、ちぎり絵が趣味だった姉から色とりどりの和紙を譲り受けると、毎日のように工作するようになった。「紙を見て『これはあの料理に使えるな』と考えるのが楽しくてね」

 作り方はシンプルだ。餅は長方形の小箱を作り、茶色や黒の和紙を貼って焦げ目を表現する。天津飯は丸めたキッチンペーパーに「卵」に見立てた黄色い和紙をかぶせ、紅白の和紙で作った「カニの身」と、緑色の和紙を丸めたグリーンピースを散らせば完成。きな粉は、おろし金ですった土色の和紙、キャベツの千切りは緑色の和紙を貼った画用紙を細長く切ったもの、という具合だ。

 これまで手がけた作品は約300点。和食からスイーツまで多彩なジャンルは、日頃のネタ集めの結晶だ。「外食するときはデジカメを持ち歩き、料理雑誌も読む。テレビの料理番組も欠かさず見てますわ」

 作品を作っては妻や孫に見せて楽しんでいたが、置き場所に困るようになってきた。「家族が見ただけで捨てるのは惜しい」と、長男で絵画講師の直人さん(48)は昨年、作品を紹介するツイッター「メガネのおじいちゃん」を開設した。やがてネットで話題になり、テレビ局が取材にくるほどに。

 「ふつうのおじいちゃんがユルい作品を作っているのが受けたんかな」と直人さんは語るが、ツイッターに載るまでの過程は決してユルくはない。作品は直人さんが隅々までチェックし、「断面を見せた方がいい」「何の料理か、ひと目でわからへん」と、作り直しを求めることもある。西滝さんは「ほんまに厳しいんですよ」とこぼすが、直人さんの「審査」を通った投稿作品に寄せられる「おいしそう」「本物にしか見えない」などの書き込みが制作の原動力になっている。

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