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Sunday, April 3, 2022

実は優秀な左手デバイス? クリスタ向け左手デバイス「CLIP STUDIO TABMATE」をクリスタ以外のソフトで試す - PC Watch

「CLIP STUDIO TABMATE」。実売価格は5,736円

 セルシスの「CLIP STUDIO TABMATE」は、同社のグラフィックソフト「CLIP STUDIO PAINT」(以下クリスタ)と組み合わせて、操作を効率化できるBluetoothデバイスだ。12個ものボタンとホイールを搭載しており、片手でペンを使いつつ、さまざまな操作をもう一方の手で効率的に操作できる。

 クリスタ専用の周辺機器である本製品だが、サードパーティー製のソフトを使うことによって、サポート外ながらクリスタ以外のソフトでも利用できる。片手利用に特化した握り心地のよさやボタンの多さなど、魅力が多いだけに、試してみない手はない。実際に使ってみたのでその設定方法と使い勝手を紹介する。

片手で使えるBluetoothデバイス。ホイールも搭載

 本製品は、左手での操作に特化したBluetoothデバイスだ。左右対称デザインなので右手で使うことも可能なのだが、もともとペンタブレットを使いながら空いた手で補助操作をするためのデバイスなので、実質的には(左利きでなければ)左手専用の製品ということになる。

 ボタンの種類はかなり豊富だ。上部にはホイールを備えるほか、その下には4つのボタン、さらにその下には上下左右+決定ボタンが備わっている。さらにボディの先端には2つのボタン、そして底面には引き金に相当するボタンが搭載されるなど、この手のデバイスとしてはボタンの搭載数は非常に多い。

 PCとの接続はBluetoothで行なう。本体後部にあるボタンを長押しすると、電源投入後すぐにBluetoothのペアリングモードになるので、PC側から検索を行ない、ペアリングを完了させる。ちなみにWindows上では「TABMATE」という名前で検出される。

 本製品をクリスタで使う場合は、以降の設定はすべてクリスタ側で行なう。クリスタの中に本製品のショートカットを割り当てる専用メニューがあるので、そこから任意のショートカットを割り当ててやればよい。もっとも導入時点でさまざまなショートカットがプリセットされているので、それをアレンジしながら使っていくことになる。

WindowsとBluetoothで接続したところ。「TABMATE」という名前で認識されている
クリスタのメニューの中には、本製品専用のショートカット割当メニューがある
ショートカット割当画面。デフォルトでは取り消しややり直し、回転、ブラシサイズ変更、ズームなどの機能が割り当てられている

「JoyToKey」を使えば一般的なソフトでも利用可能

 では本題、クリスタ以外で利用する場合はどうすればよいだろうか。ここで登場するのが、ジョイスティックにさまざまなコマンドを割り当てるためのWindows用のシェアウェア「JoyToKey」だ。TABMATEはWindowsから見るとジョイスティックという扱いになるので、このソフトを使うことで、任意の機能を割り当てられる。

JoyToKeyを起動すると、ボタンの一覧がリストで表示される。本製品の各ボタンがこのソフトにおける「Button○」に相当するかは、ボタンを押すことで該当行が反転表示されるため、すぐにわかる。

「JoyToKey」。ライセンスキーは770円。ジョイスティックの各ボタンに任意の機能を割り当てられる

 具体的なボタンの番号がわかれば、そこにキーボードショートカットやマウスのボタンなど、さまざまな操作を割り当てていく。キーボードショートカットの場合、複数の入力欄が縦に並んでいるので、そこに「Ctrl」、「C」といった具合にキーを1つずつ登録していく。

 これらは入力欄の上から順番に実行されるため、キーの登録順によっては操作が変わる点に注意したい。例えばWebブラウザで「タブを戻る」操作は「Ctrl+Shift+Tab」だが、登録時にShiftを最後に持ってきて「Ctrl」+「Tab」+「Shift」という順序にすると、「Ctrl」+「Tab」の2つが押された段階で「タブを戻る」ではなく「進む」だと誤解されて実行されてしまうので、必ず2つ目までにShiftを入れてやる必要がある。

また、デフォルトではホイールの上下スクロールすらも動作しないので、ホイールを回した時のスクロールの移動方向とその量を「100」から「−100」までの間で指定してやる必要がある。ホイールを動かした時に画面が上下どちらにスクロールするかはOSによっても異なるが、このソフトは任意に指定できる。

これはキーボードショートカットを割り当てる画面。ここでは「Ctrl」、「Shift」、「Tab」の組み合わせを割り当てている
マウス操作を割り当てる画面。マウスクリックのほかポインタの移動もこの画面で割り当てられるが、操作にはコツが必要(後述)
初期状態ではホイールすら動かないので、ホイールの回転量およびその方向も指定する必要がある
このほか外部プログラムの起動やウェブサイトの表示、テキストの入力などにも対応する

 この割り当てが終われば、左手での操作によって、さまざまなショートカットが扱えるようになる。同種のデバイスと比べてもキー数は多い上、アプリケーションごとに割当を変えることもできるなど融通も効く。とはいえあまりにも複雑な登録は混乱を招くので、まずは少なめに登録して、徐々に増やしていくとよい。

 ちなみにこのソフトは、個々のデバイス(今回でいうと本製品)に対してショートカットを登録する仕組みゆえ、同時に接続している他のマウスなどとは競合しない。例えばホイールクリックに登録したショートカットが、マウスのホイールクリックに影響することはない。マウスにショートカットを割り当てるソフトでは、全デバイスに同じショートカットを強制適用する場合もあるので、この仕様はありがたい。

マウスポインタを動かす専用ギミックは非搭載

 さてそんな本製品だが、一般的なソフトで使うにあたって気をつけなくてはいけない点がある。それはトラックボールやトラックポイントのような、マウスポインタを動かすための専用ギミックを搭載していないことだ。

 本製品と外観が酷似した製品としては、以前紹介したエレコムのハンディトラックボール「Relacon」(リラコン、M-RT1DRBK)があるが、こちらはトラックボールを搭載しており、マウスのポインタを移動させられる。しかし本製品はこれに類する機構がなく、マウスのポインタを自由自在に動かすにはやや難がある。

以前紹介したエレコムのハンディトラックボール「Relacon」(右)。サイズ、形状ともによく似ている
「Relacon」はホイール上に搭載された赤いトラックボールを使ってポインタを動かせる
本製品はトラックボールのようなポインタを動かすための専用ギミックを搭載しない

 一応、本製品のボディ中央にある上下左右への方向パッドに操作を割り当てれば、ポインタを水平および垂直方向に動かすことはできるのだが、ボタンを一度押すたびに移動する距離が固定である上、斜め方向に動かせないので、実用性に乏しい。

 こうしたことから、例えばWebブラウザで大量のタブを開いた状態で、前後のタブに移動したり、タブを下にスクロールして記事を読みたい場合、本製品単体でのタブ移動やスクロールはできても、その先で「次のページへ」というリンクがあった場合、事実上お手上げとなってしまう。

かろうじてこの方向パッドで水平および垂直方向へのポインタ移動はできるが、決まった距離しか動かせない。なにより斜め方向への移動が不可能だ
前出の「JoyToKey」で方向パッドに強引にマウス操作を割り当てた状態
詳細画面。これは方向パッドの左ボタンに左方向へのポインタ移動を割り当てているが、あくまでもエミュレートしているだけだ

 これはひとえに、本製品が単体での利用を想定せず、操作を補助するデバイスであることが理由だ。前述の「Relacon」は、寝転がるなどラクな姿勢でPCを操作するためのデバイスで、そのためマウス操作でできることはすべてできる設計になっている。

 しかし本製品は右手にマウスやペンを持った状態で、操作の効率をより上げるためのデバイスなので、マウスでできる操作すべてを完結するという発想がそもそもない。見た目や使い方は酷似していても、設計思想はまったく異なるわけだ。

 したがって前述のようなWebブラウザでの利用では、タブ切り替えと上下スクロールは本製品で行ないつつも、マウスポインタの移動はマウスで行なうことになる。もともとサポート外の使い方をしているわけで、こうしたコンセプトの製品であるということは、導入前にしっかりと把握しておく必要がある。

5千円台で操作を効率化できる

 以上のように、できる操作は一部制限されるものの、操作の補助を行なうためのツールとしてはなかなか優秀だ。マウスに拡張ボタンが搭載されておらず、キーボードショートカットを割り当てられない場合でも、本製品を組み合わせれば、多ボタンマウス顔負けの多彩な操作が可能になる。

 そんな本製品だが、実際に使ってみて唯一難があると感じたのは、電源ボタンの挙動だ。本製品は無操作の時間が20分を超えると電源が自動オフになるのだが、そのあと電源を入れるために、電源ボタンを長押ししなくてはいけない。

電源ボタン。長押しするとオンになる。なお電源オン時には毎回ペアリングモードがオンになる仕様

 これが多くのBluetoothマウスだと、軽く本体を動かすだけでスリープから復帰するのだが、本製品がスリープになるのは無操作の状態で経過した時間が10~20分の範囲だけで、20分を超えると必ず電源ボタンを長押ししての復帰が必要になる。集中的に利用しているのでなければ、何度も繰り返し電源ボタンの長押しを強いられることになる。

 実際に試してみると分かるが、これはかなりわずらわしい。せめてボタンがスライド式などであればよかったのだが、長押しだと押してしばらく待たなくてはいけないため、使い始めがワンテンポ遅れてしまう。利用するソフトがクリスタであってもこのわずらわしさは同様なので、後継モデルが出る場合には、ぜひ挙動を再検討してほしいところだ。

 と、ちょくちょくツッコミどころはあるのだが、実売価格も5千円台とリーズナブルで、気軽に試すにはもってこいだ。今回紹介した使い方はあくまでも非公式ゆえノンサポートになるが(念押し)、クリック感も良好で、ボディの成形などの品質も高い。空いている左手を使った操作の効率化を考えている人には、ぜひ試してみてほしいデバイスだ。

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