色や形が不ぞろいというだけで廃棄されてしまう野菜を減らそうと、兵庫県豊岡市出石町の農家、小川恭弘さん(32)と菜美さん(44)夫妻が、規格外の野菜を使ったメニューをキッチンカーで提供する事業を計画し、クラウドファンディング(CF)で資金を募っている。フードロスの削減と野菜に興味を持ってもらうきっかけづくりが目的だが、国際情勢などの影響で肥料のコストが大幅に上昇する一方、野菜の販売価格に転嫁しにくい切迫した状況も背景にあるという。(石川 翠)
恭弘さんは同市出身で、実家は兼業農家だったが、「もうからないので継がなくていい」と言われていたため、当時の夢だったスポーツトレーナーとして大阪などで働いてきた。客とのやりとりで出身地を答えると、好意的な反応が多く、改めて地元のことを調べると、食材や自然などの良さに気付き、帰郷することを決めた。
2013年に23歳で戻った際、同市の広報誌で偶然見かけた農業スクールに参加。1年間の研修を経て農業を始めた。同じくスポーツトレーナーだった菜美さんとともに一からのチャレンジで、夏の猛暑と冬の積雪など但馬の天候に振り回され就農から当初2年間は収益がほとんどなく、厳しい状態が続いたという。
少しずつ計画通りに栽培できるようになり、現在は年間30品目以上を栽培。野菜直売所「ベジーデプラス」(同市出石町)を開設するとともに、販路を広げるため、交流サイト(SNS)で発信を続けてきたことが着実に実り、全国に戸別直送している。
夫妻は、観光地巡りと野菜の収穫体験ができる「観光農園」のツアー商品も考案した。但馬地域には田畑が身近にあっても、農産物に触れる経験がほとんどなく、野菜や農業に関心を持ってもらおうと企画。城崎温泉の旅館や出石の観光協会などと連携して始めた。収穫の手助けや接客は、スポーツトレーナーの経験が生きているという。
一方、形が少しいびつなだけで、出荷できない野菜をどうにかしたいとの思いを抱いてきた。規格外野菜は1~2割ほどで、安値で販売するか、廃棄されることも多いという。恭弘さんは「もったいないが、より分けて少量を別の販路に乗せる労力の割に、収益がほとんどないため難しい」と話す。
そこで「自分たちで調理して販売することで解消できるのでは」と、キッチンカー事業を思いついた。イベント出張だけでなく、観光農園に併設してその場で提供することで、より農業体験が深まると考えた。メニューは割れたトマトを使用したジュースや、旬の野菜を使用したスープ、カレーなどを検討している。
課題を解決しようと考えたキッチンカー事業だが、農業を長く続けるために農家の厳しい経営状況を乗り越えたいとの切実な思いも吐露する。今年は特にロシアのウクライナ侵攻に伴う国際情勢の変化で、肥料が通常の3倍に高騰したという。野菜の価格に上乗せしにくく、加工することで単価を上げられる新規事業は重要な試みになる。
販路を開拓していく中で客と直接つながることができ、夫妻は「しんどくても喜んでくれる人の顔を思い浮かべて何とかやってきた」と感謝。今後、キッチンカー事業が軌道に乗れば、「買い物難民になっている高齢者がいる集落まで移動販売などもして地域の役に立ちたい」と話している。
CFサイト「キャンプファイヤー」で、24日まで受け付けている。
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