* * * 「何が正解なのかわからない」 小池百合子都知事が緊急会見を開き、「不要不急の外出、会食や外食も我慢しよう」と、都民に呼びかけた昨年の3月25日以降、SNSでは冒頭のようなシェフたちの言葉があふれるようになった。 食をテーマに執筆をしてきた井川直子さん(53)は、未曽有の状況下で奮闘するシェフたちへの取材を決意。緊急事態宣言が出た翌日の4月8日から5月にかけて、34人のシェフに話を聞き、原稿を「note」で公開した。さらに10月には追加取材もおこなう。 「インタビューを始めたきっかけは、あるイタリアンの店主が言った『ほかの人たちはどう考えているのかな』という言葉でした。最後は自分で決断するとしても、それぞれの場所でもがいている仲間の声を知ることは、明日への道標(みちしるべ)になるのではないか。ほかの人の考えを聞き、文字にして伝えることならば、自分にもできると思ったのです」 目標は1日1人に話を聞いて原稿をまとめること。 「実際には平均1.6日に原稿1本のペースになりました。毎日の更新にこだわったのは、感染者数や国内外の情勢、行政の対応や世論も、刻々と変わっていたからです」 巻末には「コロナに揺れた2020」という年表が収録されている。上段には日本と飲食関連の出来事が、下段には世界の動きがまとめられ、コロナ禍の一年を振り返ることができる。
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